シリーズ『離婚』第五弾

〜 財産分与と慰謝料、養育費 〜





皆さんこんにちは。二階堂です。
本日は前回のコラムの続きを受けて、財産分与、慰謝料について書いていこうと思います。


さて、この「シリーズ離婚」では離婚に関するエトセトラをお送りしてきたわけですが、ここまでで、大まかな離婚への流れだけはご理解いただけたと思います。
ただ、離婚するもしないも結局は、今後の生活そして子供の養育などを考えると、どうしても「おカネ」の話になります。というよりか、こじれた夫婦の関係にピリオドを打てるとしたら、それはおカネだけしかないといっても過言ではありません。
それでは具体的に、離婚の際に支払う(受け取れる)金銭についてお話して行こうと思います。





(1)「財産分与」
    これは,夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を,離婚する際に又は離婚後に分けることを言います。一般的には、結婚生活が長ければ長いほど分与額も多くなります。
    財産分与は慰謝料とは違いますので、慰謝料を払うことになった場合でも、請求の権利があります。ただ、その場合は慰謝料と相殺することもあります。


    〜具体的な分与率〜

    これは夫婦相互の寄与度合い、貢献度によって変わります。ただし、結婚以前に各自で持っていた財産、個別に相続した財産や、共働き夫婦で生活費用を各自出し合い、残りを各自貯蓄していた場合は財産分与の対象になりません。
    ただ、財産分与には、離婚によって一方の生活に経済的な不安が生じる場合、相手方が生活の扶養(サポート)をするという意味もありますので、財産分与の対象とはならなくとも、扶養に必要であると認められた場合は、その財産も分与しなければならない場合もあります。


    〜財産分与の対象となるもの〜

    動産、不動産すべての財産と、夫婦の生活に必要で行った借金(住宅ローンなど)も含まれ、その他にも農業の場合は共同財産分、ファミリー企業の場合はその実態に合わせた分与をすることとなります。また、退職金は、すでに受け取っているときはもちろん、数年後の定年退職を控えている場合は、それも財産分与の対象となる場合があります。
    変わったところでは、夫が妻に支えられて司法試験に合格した場合など、特殊な資格を取得した場合は、内助の功として、その資格を無形財産と考え、財産分与の対象とすることがあります。




(2)「慰謝料」
    慰謝料とは、結婚生活の中で一方が受けた心身の痛みなどを金銭で和らげるため、もう一方が支払うべき金銭のことです。
    誤解している方がいらっしゃいますが、慰謝料というのは、離婚の原因を作った側が相手に対して支払う損害賠償なので、必ずしも夫から妻に支払うとは限りません。また、慰謝料は財産分与と違い、上記のような理由がなければ支払が発生するとは限りません。


    〜慰謝料の請求〜

    慰謝料は、協議離婚、調停離婚、審判、裁判離婚のいずれのときも請求することはできます。慰謝料の算定には、不貞行為、暴力などの度合い、行為の性質(過失か故意かなど)、それぞれの資産、収入、生活能力、親権の有無、婚姻期間など、様々な要因を考慮して算定しますが、欧米に比べると、女性側が不利になることが多いようです。




(3) 慰謝料、財産分与と税の扱い
    慰謝料や財産分与の受け渡しの際、現金で支払う場合は、支払う側も受け取る側も課税されることはありません。
    ただ、不動産の場合は、支払う側に所得税がかかります。
    これは財産分与のためであっても、不動産譲渡が収入とみなされる為で、税額は、資産分与の際の時価で計算されます。ただし課税計算の際に、結婚期間などに応じて、特別控除や軽減税率の適用がある場合があるので、詳細は弁護士または税理士に聞いてみるとよいでしょう。
    また、受け取る側には不動産取得税が課税されます。
    この税額は原則、固定資産税評価額×4%という数式によって計算されますが、状況から考慮して異常に多額の慰謝料、財産分与があるとみなされた場合は、その部分に関しては贈与税が課せられます。
    つまり、慰謝料と財産分与に関しては、税金面を考えると現金での授受が一番簡単です。




(4)「養育費」
    養育費とは、離婚後に子供を養育するための費用ですが、一般的には、子供を引き取った側に対して、もう一方が支払うものとなっています。
    金額に関しては子供一人当たり月額4万円程度が一番多いようですが、養育費の金額でも争いがある場合は、「実費方式」「生活保護基準方式」などの算定基準があります。
    金額に関しては、決定後も、特別の事情(双方のケガや子供の入学など)があるときは双方または子供からの調停の申し立てをすることができます。




〜最後に〜


たとえ協議離婚の場合でも、慰謝料や財産分与、養育費の支払額、支払方法に関しては、公正証書などでしっかりと契約を結んでおく必要があります。
なぜなら、口約束だけの取り決めで「支払ってもらえない」というトラブルが毎年多く見受けられるからです。また、本シリーズでも以前に触れていますが、相手に財産を勝手に処分されないためには、離婚調停前の財産移転禁止の仮処分の申請などを行っておく必要があります。



次回は、離婚裁判についてお届けいたします。



※ 離婚紛争の際は、弁護士に依頼することをお勧めします。
  探偵ファイルではご相談に応じることは一切できません。
  文中に出てくる人名、地名はフィクションです。



( 探偵ファイル・二階堂)



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