わがまま?それとも性格の不一致?
〜 シリーズ「離婚」第一弾 〜

 東京都港区在住の山田陽介さん(32歳)は、めぐみさん(26歳)と社内恋愛の後に結婚して3年が経ちました。山田さんは上場企業勤務のサラリーマンであり、今年は課長に昇進し、念願の子宝にも恵まれました。仕事は残業続きで休みもままならないことが多かったですが、子供のためにも前にも増して仕事に精を出そうとした、その矢先でした。
 真剣な顔をしためぐみさんから急に

「もう耐えられません。お願いですから離婚して下さい」

と、住所氏名、さらには捺印までされた離婚届が机に置かれたのでした。。。



 驚いた山田さんは理由を問いつめますが、「離婚してください。」と泣くばかり。挙句の果てには、その日のうちに荷物をまとめ、生まれたばかりの子供とともに実家に帰ってしまう始末。
 ほとほと困った山田さん。とりあえずめぐみさんの実家に連絡を取り、迎えに行きますが

「そっとしてやってくれ」

と追い返されてしまいます。

「このままではどうしたらよいのか。。。」

 悩んだ山田さんは、大学時代からの親友であり、弁護士事務所に勤務する中村さんに、相談してみることとしました。

 電話をすると中村さんは夜中だというのにすぐに相談にのってくれました。
 一通りの事情を聞いた後に、中村さんは

「民法上、相手から一方的に離婚を請求する場合、次の5つがあるんだ」

と教えてくれました。


民法上、夫または妻が一方的に離婚を請求できる場合

(1)配偶者の不貞行為(要するに、浮気)
(2)配偶者から悪意の遺棄を受けた場合(生活費を渡して
   もらえない、外出できないように服を捨てるなど)
(3)配偶者が三年以上行方不明のとき
(4)配偶者が回復の見込みがない強度の精神病にかかったとき
(5)その他結婚を続けられない重大な事由があるとき


「なぁ、山田、この5つに当てはまるようなことはあるか?正直に言ってくれ。浮気をした、とか…」

 中村さんは尋ねます。

「とんでもない。まったく覚えはないよ…結婚以来、同窓会にも行っていないんだぞ。あと、その5つに当てはまるようなことなんてしてないよ。まぁ、仕事で家にいる時間は少なかったけど、それも理由になるのかなぁ。」

 山田さんが首を傾げます。

「わかった。明日、奥さんの実家にもう一度電話して、それでもどうしても話もできないというのなら、もう一度俺に電話をくれよ」

 その夜は二人で夜遅くまで飲み明かし、旧友との親交を深めつつ、

「お互い年を取って、いろんな問題があるよなぁ。」

などと語り合ったのでした…


 次の日、会社を休んだ山田さんは、めぐみさんの実家に電話をしてみました。
 まず、めぐみさんの母親が電話口に出ます。めぐみさんが出て行った理由がまったくわからない山田さんは母親に尋ねます。

「僕は、仕事も一生懸命やってきたし、子供もできたばっかりで、

 ますます頑張ろうと思っていたところなんですよ。もうなにがなんだか…」

 めぐみさんの母親はそれを聞くと、

「結婚してから毎日仕事で、あまりかまってやってなかったんじゃないのかい。めぐみともう少し一緒にいてやれたら思いつめることもなかったんだろうけど…」

とやんわりと言われます。さらに

「めぐみはめぐみなりに一生懸命やっているのよ。今は妊娠中で不安定な時期だし、もう少し時間を作ってあげてもらえないかねぇ。私達も説得するから。」


日本における離婚原因の第1位は、ここ20年ほど「性格の不一致」です。
上記の離婚原因に当てはめると(5)番にあてはまるのですが、いやはや、性格というのは難しいものです。生活環境も性格も、そして性別が違う男と女が同じ屋根の下生活していく以上、夫婦間の妥協はあってしかるべきであり、それを我慢できないからすぐ離婚、とは…如何なものかと思う今日この頃です。


「わかりました。今日は仕事を休みましたので、迎えに行きます。」

 めぐみさんの実家につくと早速、話し合いの場がもたれました。
 山田さんはやんわりと、

「妊娠してるというのに、帰りが遅かったことは悪いと思うけど、何も言わずに居なくなるのはちょっと納得ができないよ」

というと、めぐみさんは

「会社にいるときは二人であったりして、休みには出かけたりしていたのに、結婚してからは仕事ばかりで寂しかった」

というのです。
 結局、山田さんは結婚した後、子供もできて仕事に打ち込もうと思っていたのですが、めぐみさんとの意思の疎通がうまくいっていなかったようです。

 その後、お互いの両親を含めた話し合いを持ち、夫婦間の溝も埋まった山田さん夫妻は、念願の女の子にも恵まれ、幸せな夫婦生活を送っているようです。




 今回の山田さんのケースでは、破綻にいたらず話し合いで解決できた良い例ですが、このようなケースでは、ほとんどの原因が「夫婦の会話不足、コミュニケーション不足」にあるようです。

 特に、結婚期間が短いカップルが破綻にいたる際に多くある特徴ですが、夫婦間での会話や意思の疎通が少なく、「これくらいはわかるだろう」などと思い込んでしまい、夫婦の溝が深まり、突然離婚ー。というケースが多いようです。
 今は幸いにも、パソコンや携帯電話で気軽にメールができる環境にありますので、面と向かっては言いずらい男性も、そのようなコミュニケーションツールを使ってみてはいかがでしょうか?


次回は、長年連れ添った妻から離婚を言い出された田中さんのお話です。


(探偵ファイル 二階堂)

*文中に出てくる人名、地名はフィクションです。

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