一度行ったことのある人はわかるだろうが、自殺をするのにこんなに素晴らしい
ロケーションはほかに例を見ない。
 よく日本人は「わび、さび」が好きといわれるが、ここから臨む日本海の眺望は
ため息がでるほどの寂しさにあふれている。山中、山城、片山津と、由緒ある
わびしい温泉地に囲まれ、まさに、死にたくない人も死にたくさせてしまう景観なのだ。
 しかも福井県に予算がないのか、どこへ行っても街灯がほとんどなく、夜の道路は
真っ暗闇。とぼとぼ歩いて東尋坊に向かっても、人に見られることがない。

 東尋坊そのものはもっとひどく、絶壁すれすれに命の公衆電話(自殺を思い止まらせる
ためのホットライン)が立ち、まるで死者を弔う卒塔婆のようだ。
 冗談は抜きにして、夜、東京タワーのようにライトアップすれば、飛び下りが
激減するのではないかと思う。現在の状態では、絶壁の下が真っ暗で何も見えないため、
高所の恐怖を感じない。しかも、「自殺の名所」という看板で、自殺者や観光客を
呼んでいるような気がしてならないのだ。