幽霊マンション



《幽霊マンションの噂》

最初は、観光ホテルとして建てられたが経営不振のため、社長が自殺した。その後、病院やマンションと次々と経営者が代わったが、建物の中に入ると悪寒がしたり、寝ていると金縛りになる者が続出、また地下の大浴場では女の子が溺れて亡くなる事故があり、階段付近では、患者や住人が何度も男の白い影を目撃したりするため、長続きせず倒産して行った。

その後、廃墟と化した建物内では今も霊現象があるという。噂では
『焼身自殺した者の霊』
『「助けて」という血文字の浮き出た部屋』
『大浴場で女の子の霊』
『階段を登ると後ろから男が着いてくる』
と言われている。

他にも

屋上・各部屋のベランダで人影を見た。
発光体を見た。
屋内で、何かの気配がするが振り返ると無くなる。
階段の踊場で男の霊と目が合い、男は壁の中に消えて行った。
後日、寝込んだ人や亡くなった人がいる。

などの体験談が囁かれている。

幽霊マンションは今から25〜30年ぐらい前に建築された。建築途中で建設会社か不動産会社が倒産、工事は一旦中止となった。その後、工事は別の会社が再開したが、○○団が介入したため営業は出来ないまま現代に至っている。元々は老人ホームとし建築されたものらしい。

鉄筋コンクリート造 6階建
部屋数 A棟:48 B棟:50 C棟:36 計:134
大字名 川上
子字名 ○の原
地番 19○○−166
登記地目 宅地
地積 12283.09u


《現地調査》
幽霊マンション付近に調査車輛で到着。

温泉街の外れにあり、すぐ横に山が聳えている。調査機材を再確認して徒歩にて現地へ向かう。

月明りに幽霊マンションの輪郭がくっきりと浮かび上っていた。


『幽霊マンション』


入口の門には、有刺鉄線が張り巡らせている。周りを調べると、フェンスが大きく裂けている場所が見つかった。さっそくそこから敷地内に潜入した。

大きな建物だ。正面玄関から入ると真正面に階段があり、その左右にエレベーターが1基ずつ計2基ある。

中央の建物から3方向にA棟、B棟、C棟と分かれる構造だ。

中に入ると不意に暗闇に包まれた。正面玄関の屋根が月明りを遮ったのだ。

屋内は荒れ果て天井はところどころ破れ落ちている。周りを伺うと地下へと降りる階段があった。降りる前に写真を撮ろうとカメラを構えたが、ストロボの調子がおかしい。仕方なくマグライトの明かりで写真を撮ろうと階段の奥を照らした。

風呂場があった。『大浴場で女の子の霊』が出ると噂の場所はここか?



1階に戻って辺りを照らすと、別の下り階段を発見した。こちらの階段も下を照らすと風呂場があった。



次は上の階である。先に最上階へ上がってしまい、そこから順に下へと調査を始めることにした。
1階から6階へと足早に階段を上った。暗くて不安だが、しっかりした造りだ。
6階まで上がって初めて気がついた。この階段が噂にあった『階段を登ると後ろから男が付いて来る』だったようだ。順番に調べようとライトで廊下を照らしたら、さらに上へと続く階段を見つけた。6階までじゃなかったのか?
階段を上がると屋上に出た。何かの作業部屋のようなところがあり、壁面に階段が据え付けられている。



そろそろバッテリーが気になってきたので、デジカメの電源を切ろうとした。
ところがOFFボタンを押したが最後、今度は立ち上がらなくなってしまった。バッテリー切れにはまだ間がある。長い間、使っている機種だが、こんなことは1度もなかった。
急に怖くなってきた。だがどちらにしろ今いるのは屋上だ。嫌でも階段を下りるしかない。
デジカメが作動しないため、撮影はできないが、調査は続けることにした。

6階まで降りた。A棟、B棟、C棟と順に各部屋を調査して行く。
B棟の一番奥の部屋で壁に書かれた血文字を見つけた。


B棟の一番奥の部屋で


『「助けて」という血文字の浮き出た部屋』とはここのことだろう。ただしこれは血文字ではない。赤色が鮮明過ぎるのだ。誰かがペンキで書いたのだろう。

5階へと降りる。6階と同様に各部屋を調査して行った。
A棟、B棟、C棟とも、部屋の様子は6階と同じく荒れ果てていた。特別、気になる部屋はない。
そのように1フロアづつチェックして行った。特に目立った違いはなく、どこの部屋も同じように荒れ果てている。

1階に戻り、最初に調べなかったC棟に行く。
そこで『焼身自殺した者の霊』の部屋を発見した。



壁が黒く焦げ、火の強さを物語っている。本当にここで誰かが焼身自殺をしたのだろうか?
台所周りがかなり激しく燃えた感じがした。

C棟を出て中央へ移動した。すぐ左側に集会場と書かれた看板があり、集会場の奥には、一段上がった舞台らしき物がある。そのままB棟へ。

B棟には今までのような部屋は無く奥にボイラー室があった。ボイラー室を出て手前の仕切りの無い大部屋に入る。

部屋の窓側に1区画だけ区切った部屋がある。ドアには「寮母室」のプレートがあった。中央に戻ると玄関から入って右側に警備室らしき部屋があった。

地元の人に幽霊マンションの噂を聞くと、ほとんどの人は関心がないようだった。「そんな事無い」と答える人が大半だ。ただ、中にはあまりその事は話したくないと口を閉ざす人もいた。

幽霊マンションの中には噂のネタになった部屋は存在していた。建物の大きさ、構造、立地を考えると真偽は別として噂になるのは仕方がないだろうと思う。
この廃墟の中での調査は気持ちのいい物ではなかった。学生の頃、滋賀県の琵琶湖の横にあった廃墟(現在は取り壊されて存在しないが、霊が出ていたらしい)に潜入した時の事が頭から引き離せないでいた。
特に焼けた部屋は嫌だった。それまでは仕事と割り切っていたから不思議と恐怖心はなかったが、あの部屋だけは嫌だ。
ところで本当に、この『幽霊マンション』に霊は存在するのか?
調査中に調子が悪くなったデジタルカメラだが(今は問題なく使用している)、実は調子が悪くなった地下の大浴場の真上にも屋上の真下にもあの焼けた部屋あったのだった。
偶然かもしれないが、何かあるような気もする。ちなみに調査を終えて帰宅途中、調査車輛のマフラーが落ちたが、これも何かの仕業だったのかどうか。
心霊現象が絶対にないとは言い切れない気がする。限りなく白に近いグレー、あとは1人ひとりの考え方だろう。