つがねの滝


長崎県西彼杵(にしそのぎ)郡大瀬戸町の河通川をせき止めて造られた河通ダムの上の道を歩いていくと、入り口の細いトンネルが見える。トンネルに入ると中はとても暗く明かりとして設置されている蛍光灯もついているかと思えば、突然消えたりとなんとも心細い。明かりがないときはまっすぐ歩くことさえ容易ではない。

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時折、水滴が垂れてきてムード満点

約30mはあろうそのトンネルをくぐりぬけると、ほどなくして岩を激しく打つ水音が聞こえてくる。こころなしかトンネルに入る前と抜けた後では、1〜2℃違うのではなかろうか。すこし肌寒く感じる。
しばらく歩くと「つがね落としの滝」と書かれた案内が見えてくる。そのすぐ目の前につがねの滝はある。「つがね」とは、滝の上流に生息しているモズクガニのことで、この蟹も水の流れとともに落ちることからこの名称がついた。

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      つがね(?)

生い茂る木々の間から差す木漏れ日と清らかな冷たい水、マイナスイオンに包まれたおいしい空気により、自然と癒されていく感じだ。しかし、夜になるとその表情も豹変する。数多くの木々が光を閉ざし、山間から突き出た岩肌が今にも襲い掛かってきそうなほどの圧迫感がなんとも不気味だ。
実はここは、いわくつきの場所として有名である。
隣町の外海町は禁教時代、その隔絶された土地ゆえに多くの隠れキリシタンの潜伏地であった。五島列島も隠れキリシタンの有数の潜伏地だが、多くはこの外海地方から移住したものである。大瀬戸町はその昔多くの隠れキリシタンのキリシタン狩りがあった地で、多くのキリシタンが難を逃れようと水のあるつがねの滝に身を潜めようと山に登ったが、山狩りでほとんどのキリシタンが惨殺処刑された。
それゆえにつがねの滝はそうした多くのキリシタンの無念の霊が集まってるという。

夜も深くになるにつれ、次第に何も見えなくなり、滝の岩を打つ水音だけが不気味に静寂の闇に鳴り響いている。
懐中電灯を照らした場所も何か人の顔のように見え、身震いさえしてくる。
はやくこの場所から撤収したい、そう思いながらもシャッターを切る。何枚かに一枚、光のような玉のようなものが写りこんでいる。霊感の無い自分でさえこの異様な雰囲気を感じ取っている。
無事、調査も終わり、トンネルを抜けたところで手に汗を握っていることに初めて気づく。

来るときに感じた温度差をあらためて思い出した。

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   あなたには何にみえるであろうか・・・

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   (拡大図)