住宅街の倉庫の壁



旭川市大町近郊のある住宅街では、こんな噂が流れていた。
「この住宅街の一角にある倉庫の壁には、首をつった人間のような染みがあり、壁を何度塗り直しても、その染みは再び浮き出てきてしまう」と。
この噂を検証するため、現地に向かい調査を開始した。
聞き込みをくり返すなか、あるスタンドで働く店員の証言が得られた。
「それなら大町にありますよ」
しかし、聞き込みの成果に逸る我々の気持ちを諌めるかのように、その店員は続けてこう語った。「…でも、もうそれ壊されましたけどね」。
とにかく大急ぎで現地に向かったが、目の前には何もない空き地が広がるばかり…。


とりあえず撮影を行ない、またスタンドに戻り、さらに詳しく話を聞くことにした。
「あそこの倉庫は噂で壊されたようなものですよ。見た人間が言いふらして、噂が噂を呼んだんです。まわりが気味悪がるせいで、壊されてしまったんですよ!」店員は胸を張って答えた。
噂は事実だったが、既に取り壊されたので、倉庫の壁の染みそのものを確かめる事はできなかった。しかし、さらなる聞き込みによって、その壁の染みは、「もともとこの付近の、別の倉庫で首を吊った自殺者の霊が現れたものであるらしい」という新たな証言を得ることができた。
我々の調査はいったん幕を閉じたが、その後、この倉庫の二階から飛び降りて自殺した者がいた、という話を聞いた。その時我々は、ある忌わしい現象が再び起こるのではないかと思わずにはいられなかった。つまり、また他の倉庫の壁に、首をつった人間のような染みが現れ、決して消えることがないという現象が……。