全国的に有名な湖。この湖は入水自殺の名所といわれており、自殺者があとを絶たない。
しかし死体はなかなか発見されないという。水面に上がってこないのである。湖畔に靴と遺書はあるのだが、死体があがらないといったことはこの湖では日常茶飯事といえる。それは湖底に藻や海草などがたくさん生えており、死体が絡み付いて浮き上がれないからだ。冷たい湖に沈んだ死体は、屍蝋化してきれいなままだという。冷凍保存されているのと同じ事である。
それを裏づけするかの様に、聞き込みで得た証言はほとんどの霊が霊とは思えない程のきれいさがあると口を揃えた。それは人間と見間違える程とのことである。
ある人の証言によると、湖畔で一人、水浸しで立っていた女性がいたので、声を掛けたところ、女性は振り向き、薄気味悪く笑いかけてそのまま湖の中へと消えていったという。静かに湖を眺めていたというが、後ろ姿が寂しそうであったとのこと。彼女は一体、何を見ていたのだろうか・・・。
またある人は、湖の中から体半分を出し、湖畔をじっと見つめる老婆の姿を見た。その老婆と目があった途端、老婆はゆっくりと湖畔へ近づいてきたが、近づくにつれ姿も消えていったという。
この様な証言を幾つか得ることができた。
湖の底に眠る綺麗なままの亡骸。姿形が損なわれないことで、かえって成仏出来ずに彷徨い出てくるのかもしれない・・・。
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