●更新日 03/12●
秘祭の島 謎の人魚伝説を追う その2
高速フェリーで西表島へ渡ると、濃密な空気、港を離れるとすぐに密集した密林です。
いわれた民宿へ向かうと、そこには南洋生まれといった亭主がいました。
「これから、宿泊客と一緒にP島へ向かうところだったからね。調度良かったね」
とぶっきらぼうに言います。
「ところで、あんたなんでP島へ向かいたいの?」
い、いやぁ…、海がきれいな島だと聞いて…。だなんて思わず答えたのも、絶対秘密の祭を内緒で撮影をした内地の人間がリンチを受けた、なんて事件を石垣島で調べて知っていたからなのです。
すぐに出発となり、10人ほど乗ったら一杯のボートに乗ると、いざP島へ。
波しぶきを受けて小型ボートでP島へと渡ります
観光気分ではしゃぐ客3名とは少し変わった来訪者(記者)。
途中、スクリューに海ぶどうが絡まるといったトラブルもありましたが、なんとか島が見えてきました。いよいよ上陸です。
「あー、行っちゃいけない場所があるから、そこは絶対行っちゃダメだよ。神聖な場所だからね」碇を降ろしながら亭主の一言。
島を巡ると、あちこちに『観光客立ち入り禁止』の立て札。噂の人魚神社前にもヒモが張られ入れません。
江戸時代の瓦版より、越中で捕れたとされる人魚の様子
P島は7所帯、10名ほどが生活しているといいますが、すれ違ったのは年老いたお婆さんだけでした。
狭い島内は歩けばすぐに祭に関わる謎の神社があるのでしょうが、鬱蒼とした密林はそれを阻みます。
途方に暮れていると、後ろから亭主がやってきました。
「あんた、なに調べ来たの? プーリーのこと? プーリーは島のもんだから、取材はムリだよ」
最初からバレバレでした。こうなったら…。と聞きたいことをこの亭主にぶつけてみました。
プーリー(豊年祭)ってなんなんですか?
「島の祭りよ。神の祭り、一番大切なものよ」
アカマタクロマタとは?
「ニールピト(あの世の人)よ。アカマターは豊漁をもたらしてくれる神様のお使いさ、お面を付けたんじゃない、そのとき神様が憑かれるのよ」
アカマターと類似が指摘される中国ミャオ族のマンガオ
人魚神社とは?
「昔の人を養ってくれたザンを供養するところ、ザンの骨を祭っているよ。島の聖地よ。部外者は入ってはいけない。アカマターも許さない。祟るよ」
オン(聖地)への鳥居、この向こうに禁断の人魚神社が…
…なぜ祭は誰にも見せないのか?
「…島のものだからよ。島以外の人間はダメさ…。だからこれ以上訊いても無駄さ」
ここで頑なになってしまいました。
怪しいモノ好きメディアは、この祭に“夜這い”や“乱交”が行われていると取上げをしているものもありますが、高齢化が進む島民たちが今も大事に伝える祭は、よもやそんなことはないでしょう…。
むしろ、南海の孤島で豊漁を願う島民たちの本当に真摯なる願いが、誰にも邪魔させない、島だけの秘密になったのではないでしょうか…? 本年もひっそり旧暦6月頃、P島では謎の祭が開催されます。
木之下秀彦
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