30年目の・・・
12年前、友人の中川さん(仮名)は三重県にある高校に入学しました。 ポツンと・・・周囲にまったく馴染まず、孤立しているような女の子がいたと言います。いつもと変わりない休み時間、周りはざわついているものの、その女の子の周りだけは静かで暗い雰囲気で、他のクラスメイトはまるで彼女がいないかの様に振舞っていました。 まだ友達が出来ないのかな? 私はそう思い、彼女に話かける事にしました。 「どうしたの?元気ないみたいだけど大丈夫?」 そうすると、彼女はゆっくりと顔をあげました。 彼女の顔はよく古い写真に写っているような、昔の女学生風で・・・私はまったく見覚えがありません。 (こんな子、いたかなぁ?) そんなことを私が考えていると、彼女は口を開きました。 「今年だね・・・・・」 彼女は不気味に微笑みながらそう言いました。 何が?と私が聞き返す間もなく彼女はスッと立ち上がり、ベランダに出て・・・ そしてそのまま飛び降りてしまいました! 私 「!?」 このクラスは4階。 あまりにも驚き過ぎて、声なんて1つも出ません。何とか固まった体を動かし、ベランダに出て恐る恐る下を見てみると・・ そこには誰もいないし、何もない。 慌てて周りのクラスメイトに聞いてみても、誰?知らない、見てない、寝惚けてるんじゃないの?と言われる始末。 もちろん夢などではないはずですが、今起きたことを考えると、私は気分が悪くなりました。 どうしても彼女の事が気になって仕方ないので、放課後、入部したばかりの部室でその日にあった事を先輩に話しました。 そうすると、先輩が思いがけない話を始め・・・ その話はこういうものでした。 「うちの高校古いでしょ?だいぶ歴史があるみたいなんだけど、一つ変な噂があってね、それは30年に一人、生徒が死ぬんだって。事故だったり自殺だったり、いろいろらしいんだけど、決まって一年D組の生徒なんだってさ。そういえば、あんたは一年D組だったっけ?・・・あ、ごめん。 他にもいろいろそういう話が多いのよね、この学校・・・。例えば、講堂にはよく出るとか・・・。それに絶対見ちゃいけない鏡がどこかにあるらしいよ」 その話を聞いた途端、彼女の言った「今年だね・・」という言葉が頭にフラッシュバックしました。声はとても鮮明で、夢でなんてあるはずがない。 今年がその30年に一度の年なのかどうかは、先輩にもわからないようでしたが、私はとても怖くなり、その話は単なる噂、自分が見た女の子は夢だと思い込むことに。 私もいつしかそんな話も忘れ、授業に部活に忙しい毎日で、気がつたら年も変わった頃、ふと彼女の事を思い出しました。 「やっぱり自分の気のせいだったな、去年は何もなかったし・・・」 そう思っていた新しい年の2月。 3年生が受験の準備で自由登校に入って間もなくの朝。 「おい、お前の学校がテレビに出てるぞ!」 そんな父親の言葉で目が覚めた私がテレビで見たものは 『○○高校に通う2年生が強盗殺人に遭った』というものでした。 その日は学校で全校集会が行われ、亡くなった生徒へ黙祷が捧げられたのですが、私には「1年D組」「30年目」という言葉が頭に浮かんでそれどころじゃありません。 学校の暦では、前年の4月から翌年の3月までが一年。 そうか、自分の年代にたまたま被らなかっただけなのかも・・。そして被害にあった生徒は、思っていた通り一年生の時にはD組。 そして事件から数日後、被害者の生徒の葬儀の日。 出棺を見送るため全生徒が外に整列した時、私はもう一度その彼女を見ました。 初めて見た時に彼女が消えていったベランダで不気味に笑っていました。 一気に気持ち悪くなり、その場で嘔吐し出した私を介護してくれた先生。ふとベランダを見ると、彼女の姿は消えていました・・・ 過去にその学校で何が起こったのか、何か原因で彼女はそのような事を繰り返すのか、中川さんは知る由もないし、知りたくないと言っていました。 もちろん現在もその高校は実在します。 彼女は今もその時を静かに待っているのでしょうか。 西垣 葵 |
探偵ファイルのトップへ戻る |
|
|