●更新日 01/10●  
			
				
				
				メッセージ
 
  
				
				
			 
			
				
				夜の帳の中、天井から垂れ下がった紐を首に括った女が教室でゆらゆらと揺れていた。 
				
  
				それは中学生の頃だった。 
				忘れ物に気付いた私は自転車を走らせ学校へと向かった。 
				そして教室に辿り着いた私の目に飛び込んできたそれが首つりだと理解するのにそう時間はかからなかった。 
				大人の女性だった。 
				
  
				  
				
  
				私は慌てて教室を飛び出し職員室へと走った。 
				宿直の人に事情を説明し共だって教室へと行くが、そこにはもう首つり女性の姿はなかった。 
				
  
				次の日、私は昨夜の出来事をクラスメートに話した。 
				瞬く間にその話は学校中に広まり幽霊説を筆頭に様々な憶測、諸説が飛び交うようになった。 
				そんな中、ただ一人異議を唱える女子生徒がいた。 
				嘘っぱちだと。 
				「どうしてそう思うんだ」そう私が問い質すと彼女は涼しい顔で言った。 
				
  
				「あなたは学校に何を忘れたの」と。 
				
  
				ぞっとした。 
				そういえば私は何を忘れたのだったか。 
				答えられない私に彼女は「やっぱり」と忌々しげに笑った。 
				
 
  
				数年が経ち私が大学二回生の頃。 
				一人暮らしを始めてはや二年が経とうとしていたある日、郵便受けに一通の手紙が入っていた。 
				その内容は意味不明で悪戯とも考えたが本文の最後に書いてある差出人と思わしき名前に妙な違和感を覚えた。 
				それは数分後にかかってくる母からの電話で確信へとかわった。 
				
  
				「高橋○美って子、知ってる?あなたが中学生の頃同級生だった。その子ね、自殺したんだって。中学校の教室で。首つりみたいよ」 
				
  
				首つりというフレーズにいつしか忘れていたあの記憶が甦った。 
				そして名前。 
				中学校の卒業アルバムを開きその顔を見た私は愕然とした。 
				私の話に難癖をつけたあの女子生徒だった。 
				
  
				もしや彼女は私の話を疑った為に、あの首つり女性に憑き殺されたのでは。 
				
  
				そんな想像が頭をよぎった。 
				だがそれは違った。 
				先程の手紙。 
				その内容を思い出し私の背筋は凍った。 
				たった一行の文面。 
				それが全てを物語っていた。 
				
 
  
				『どうして思い出してくれなかったの? 
				 
				高橋○美』
				
  
				  
				 
				
				 
				 
				 
				
				徹 
				
 
  
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