●更新日 03/13●


実録・新型インフルエンザ予防接種に振り回された人々



この冬は新型インフルエンザが猛威をふるうと言われながら、予想は的中とはならなかった。

予測された被害が生じなかったことは望ましい結果かもしれないが、一方で様々な問題点も指摘されている。新型インフルエンザの予防接種は、優先順位の高い人々から受けられるとされた。しかし、特に必要とされる人々への接種が完了する頃には、既にピークを過ぎていた。そして、実際にはワクチンの不足どころか、過剰な在庫を抱えてしまった。

厚労省サイト

結果として、医療機関の対応に混乱が生じたが、このような問題は予防接種を受ける側にも当てはまる。その一例を、今回は紹介したい。大学で教鞭をとるAさんの場合、インフルエンザの予防接種をできる限り受けるようにと指示する文書が、勤務先から12月上旬に送られてきた。

学内でのインフルエンザの感染拡大を防ぐために、季節型インフルエンザや新型インフルエンザの予防接種を受けた教職員には、助成金が支払われるという。日頃から健康管理に気をつけていたAさんは、この通知が来る以前の段階で、既に季節型インフルエンザの予防接種を受けていた。

予防接種をうながす文書

しかし、それを受ける時点で、新型インフルエンザの予防接種も一緒に受けることはできなかった。「現在は優先度の高い幼児や高齢者、入院患者から順次始めているところなので、年明けか春先までは難しい」と、医師に言われたという。大学からの通知が届いてから、Aさんは病院に再度問い合わせたが、やはり接種が可能になる時期は未定と言われてしまった。

その後、爆発的な流行が訪れることなく、新型インフルエンザは下火に。すると、新型インフルエンザの予防接種の対象が、まもなく一般の人々にまで拡張されると、1月に報じられた。しかし、その時点では、Aさんの通院先にはワクチンが届く日程は決まっていなかった。決まったとしても、まずは入院患者で予防接種が必要な人々を優先するので、外来患者の受付開始は未定だという。

結局、Aさんが予防接種を受けられたのは、2月半ば近くになってからだった。その頃には、世間では新型インフルエンザの話題すら出なくなってしまっていた。Aさんは念のため予防接種を受けたが、そのような状況で大学に費用の一部を負担してもらうのは心苦しいと考え、助成金の申請をしなかった。

予防接種を受けた証明書

新型インフルエンザが再び流行した時には、今回の失敗を教訓として生かしてほしいと、Aさんは自らの経験に基づいて語った。



探偵T



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