●更新日 07/01●


追跡取材、おぎやはぎの落書きを正当化できない理由


二度にわたってお伝えした、お笑いコンビ・おぎやはぎによるベルリンの壁への落書き問題について、続報をお届けする。

前回の記事で扱ったように、彼らが落書きしたアートは法的な管理下にあり、文化財保護指定されている。現地には、落書きをしないよう呼びかけたプレートも設置されている。しかし、落書きは止まらず、保護も徹底されているとは到底言えない。

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こうした状況について、ドイツ大使館に話を聞いた。広報部の担当者によると、現地の落書きが問題になっていることは把握しているという。しかし、「ドイツは地方分権が盛んで徹底しているため、中央政府は基本的に口を出さないことになっている」とのことだ。

前々回の記事で電話取材した日テレ総合広報部にも、6月30日に再度連絡を入れた。だが、「担当者が会議で席をはずしている」、「いつ戻るか分からない」という。28日に電話をかけた際には、「1時間後に総合広報で局としての見解を伝える」とのことだったにもかかわらず、その約束は未だ守られていない。

おぎやはぎが所属するプロダクション人力舎にも、30日に再度の電話取材をした。28日の時点での説明では、担当者は週明けに戻るとのことだった。しかし、連日外出していて不在であり、「今日も外の現場に出ていて戻らない予定」という。いつならば連絡を取れるのかと尋ねると、「明日になってみないと分からない」として、回答を避けた。

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今回の件について、倫理学の研究者に話を聞いた。

――この落書きについて、どう考えたらよいでしょうか。
「法的に保護されている文化財を損傷することは、当然違法です。自由民主主義を標榜する社会のルールは、社会及び他人への重大な危害を及ぼさない事柄は許容して、個人の権利を守るということです。ただし、それは法の対象とならない個人の趣味や価値の次元での話です。法的に守られた文化財を損傷する行為には、このルールを適用できません。」

――法が十分には機能していないようですが・・・。
「「多くの人々が法を侵しているのだから許容される」とは言えません。「多くの人々が法を守らない」というのは「事実判断」であり、そのことから「法を守らなくてもよい」という「価値判断」を導くことは誤りです。当然、ベルリン州政府にも問題があり、法的な保護対象としている以上は、徹底した管理をしなければなりません。」

――落書き行為の責任については、どのように捉えますか。
「一般の観光客も含め、落書きした当人たちに責任があることは言うまでもないでしょう。落書きの場にテレビ局のスタッフが同行していたようですが、落書きは番組内容と関連しているのか、関連がないとしても番組関係者は落書きを止めなかったのか。この点について、正確な事実確認と説明の義務が、テレビ局や関係者にはあります。状況次第では、メディア倫理との関連で、BPOが審議するに値する問題にもなると思います。」

AFP BB Newsの2008年4月23日の記事によると、アートだけでなく、残り少なくなったベルリンの壁そのものを保存する方向へと動きつつあるという。それを実現するためには、管理する側だけでなく、現地を訪れる観光客たちも認識を改める必要があるだろう。



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