●更新日 08/20●

夏休み企画♪ブラッド・ピットを追え!(後編)


成田空港第2ターミナル、わずか40秒ほどでファンの前から姿を消したブラッド・ピットは、他のゲストとともに裏口から漆黒のプレジデントに乗り込んだ。
新米探偵Tは我々を乗せ、ブラッド・ピット一行を追いかけた。



5月15日、晴れのちくもり。
東京に出てきて3ヶ月。
探偵といっても先輩の助手しかまだやったことがなかった。
芸能探偵がボクに託したプロジェクト『ブラピを追ってみるのよT君!』は、言ってみるのも大げさだが、ボクの短い探偵生活の集大成だ。

西原「T君、あの車よ、わかる?」
ボク「え、ええ……、わかってますよ」
西原「どうしたの?」
ボク「ボクちょっと疲れてるんですかね。車が……」





何重にも見えるんですが。。。


その後すぐわかったことだが、これは残像現象などではなかった。
ただ、5台連続プレジデントが並ぶという異常な光景を、ボクの脳が受け入れる準備をしていなかっただけだ。
この行列を見失うなんて、鳥取砂丘で昼間の太陽を見失うよりありえない。
「これって尾行……なの?」
というのは禁句だと思ったから言わなかった。
今はただ、ボクにこんなチャンスを与えてくれている芸能探偵に感謝、感謝である。

隊列は一糸乱れることなく一定の間隔とスピードを保ち、その高速走行は芸術と呼べる域に達していた。





ボク「西原さん、ここまで来たらボクも見てみたいです、ブラピ。横付けしてもいいでしょうか!?

ダッテダッテ、、、みんなは空港でブラピ見たけどボクはずっと車で待ってたからブラピ見れてないじゃん!!!
なんて駄々をこねるクソガキを見かねてか、西原さんからGOサインがでた。

西原「うーん、ブラピどれかなぁ。あ、これこれ」
ボク「どれどれ?」

って……、




スモークで見えないじゃんっっ。

他の来日ゲストと違って、なぜかブラピの車両だけ後部座席に完全防御のスモークが……。
明らかに特別警戒している。
これじゃブラピが見えない。
しょんぼり……。

でも、それでもよかった。
ボクはこう考えることにした。

ボクは今、ブラッド・ピットのたった3メートル隣りで、ブラッド・ピットとまったく同じスピードで空間を移動している。
ボクは今、ブラッド・ピットと違うことを考えているだろうけど、同じ景色、同じ夕焼けを見ている。


彼、長旅で疲れて寝てるかもしれないけど。。。

ちょっとだけ世界のブラピに憧れる一市民になってみたが、すぐ仕事に戻らなくてはいけない。
尾行と言っても見失いようがないから、こうなったら警護するくらいの気持ちでついていくか。
ファンなのか写真週刊誌なのか知らないけど、怪しい車が一台いるし。
ボクらも怪しいから放置したけど……。

途中、高速の料金所で隊列を乱してしまった一行は、渋滞の中「そこまでムキになるかね」と言ってやりたいくらい、必死に隊列を整えたりもした。
日も暮れたころ、プレジデントの行列は宿泊先の六本木ヒルズの関係者以外立ち入り禁止の方に入っていってしまった。

ボク「西原さん、、、ブラピまったく見えませんでしたね……」
西原「まあいいわ……、






私たちは記者会見で撮れるから




ボク「で、でもボクはもう明日には東京を……」
西原「今日はこのまま事務所に戻りましょう」

そのまま芸能班を事務所に送り届け、ボクの探偵生活・第一期は終了した。
芸能人の尾行、というには物足りなかったかもしれないけど、一度やってみたかったしまあ良かった。
いつかまたここに戻ってきたら、スクープも撮ってみたいけど。
なんだか今日のボクの仕事は、尾行というより、まるで成田空港までの運転係だったみたいだ(笑)。








運転係だったんですが。



探偵ファイル



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