●更新日 06/16●







八ッ場ダムで水力発電計画、その実現可能性は





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八ッ場ダムによる水力発電に、懐疑的な立場をとる人々もいる。その一人が、ダム問題を長年にわたって調査してきた嶋津暉之氏である。氏の著作『八ッ場ダム 過去、現在、そして未来』(岩波書店)によれば、「吾妻川には多くの水力発電所が設置されていて、川に流れるべき水の大半が発電所への送水管の中を流れている」。

八ッ場ダムで水力発電計画、その実現可能性は

八ッ場ダムの建設計画がある吾妻川の水は、既に東京電力による発電に多く使用されているというのだ。「八ッ場ダムができた場合、発電所への送水が現状のままではダムに水が貯まらないので、巨額の減電補償金(おそらく数百億円)を東電に支払った上で、この発電用取水量の大半を八ッ場ダム貯水池の方に流すようにする必要がある」。

つまり、八ッ場ダム完成後に吾妻川の水量を確保するには、現在の水力発電を大幅に減らさなければならないという。それに対して、ダム湖からの放流によって発電できる量は限られている。したがって、ダム完成によって水力発電が可能になるという構想は、全く現実的ではない。嶋津氏は、このように主張する。

一方、八ッ場ダム工事事務所のHPには、嶋津氏の見解と読み比べてみたい記述がある。ダムの貯水機能について、次のように説明している。「八ッ場ダムの上流域の面積(=集水面積) は約708平方キロメートルと広く、吾妻川の水量は安定しているので、貯まりにくいということはありません」。

八ッ場ダムで水力発電計画、その実現可能性は

この点を、八ッ場ダム工事事務所の担当者に尋ねてみた。嶋津氏の指摘する論点を挙げたところ、現時点ではダムそのものを検証中のため、答えられないという。水力発電の可能性についても、「一企業との協議事項に関する情報なんで、そんなことを途中段階でお話しすることはできない」とのことだった。

2011年6月8日に行われた群馬県の県議会八ッ場ダム対策特別委員会でも、嶋津氏が提起した論点が議題となった。しかし、特に3月の震災以降、こうした問題がマスコミで取り上げられる機会は、極端に減った。大勢の記者や観光客が現地に殺到した光景は、すっかり過去のものとなってしまった。その陰で、宙に浮いたままの計画に、八ッ場ダム建設予定地の人々は今も八方塞の状態だ。

この事実が、忘却されてはならない。



高橋




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