●更新日 05/11●








ボランティアの現場で何が起きているか







「『ボランティアに名乗りでる人が多すぎて、募集をストップしている』というのは誤報です。
実際、私達が作業の当たっている地域ではボランティアが足りていません」

宮城県石巻市でボランティアのチームリーダーを勤める角田さん(仮名・40歳)は語る。
5月初旬の大型連休の際に、日本中から大勢の人々が訪れたが、情報が錯綜していた。大型連休以前から連日2000名ほどのボランティアが参加したが、大型連休中は平均1500人ほどだったという。
現場で何が起きているのか、当サイトスタッフが参加したボランティアの様子を報告する。



募集していないという情報だったが、ボランティアセンターになっている石巻専修大学を訪れると、すぐに登録することができた。午前9時から10名ほどの班に別れ、市内の各所に移動する。移動は各人所有の乗用車に分譲した。



作業のメインとなるのは、家屋内や家の敷地に堆積したヘドロの撤去だ。工業港である石巻の海底にはヘドロが溜まっており、それが街中に押し寄せた。一方で家屋の解体や車の撤去などは重機の技能などが必要で、一般人のボランティアは参加できない。

ヘドロの撤去は重労働だ。20センチほど堆積したものをスコップですくい、土嚢に収める。悪臭がひどく、時折飛散するのでマスクやゴーグルの着用が必要になる。ヘドロの下には、近隣の製紙会社から流出した大量のパルプがまた10センチほどの層を作っている。これらは土壌を汚染するので、放置することはできない。



ひとつの家屋のヘドロ撤去を完了するのに、面積によるが10名で平均3日ほど。積み上がる土嚢は数百個に及ぶ。



あるボランティア男性が語るには「土嚢が足りません。節約しながら使っているが、とても追いつかない」。また休憩中の土嚢の放置は厳禁になっている。近隣住民が自宅のヘドロを撤去したいが、どこからも手に入らないので、やむなく持ち去ってしまうという。



作業が終了したのは午後3時だった。
休憩をはさみ、たった5時間の作業だが、重い疲労が体を満たす。

ボランティアの重要性を体で痛感した。
募金がいくら集まろうと、ヘドロはなくならない。


そして人的資源は市の職員や自衛隊がいくら尽力しても決定的に足りない。一人ひとりがボランティアに参加し、地道な作業が積み重なれば、復興は確実に近づいてくる。奈良から来たという男性(52歳)は、明るい笑みを浮かべつつ、しかし信念の宿ったまなざしでこう言った。「誰かがやらんといかんからね」。

ある被災者はこう語る。「津波で多くを失ったけれど、(ボランティアの人々のおかげで)精神的にたくさんのものをいただいています」。

復興までの道は過酷だが、石巻はしっかりとした足取りで歩み始めている。





ニノマ




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