●更新日 08/16●





変死者    〜因果



不動産サルベージの田中氏に頼み、奈津美さんの部屋の因果関係を調べてもらった。
翌々日、驚くべき事実を知る。
奈津美さんの部屋自体には因果が無かったが、何と両隣の部屋で自殺者が出ていた。
私は友人の家に身を寄せる奈津美さんから鍵を借り、部屋に泊まり込んだ。


2日目の午前3時、クローゼットでゴツ…ゴツと異音が。
『来た…』
直感でそう思った。
次に、キッ…キッと何かを引っ掻く音。
私の左目は気の流れを感じる。クローゼットのある壁を見た。

白い小さな渦巻が現れた。
その渦巻はゆっくりと大きくなっていく。
中心に、顔が見える。
哀しげで、無念そうな若い女性の顔。頭の上の右半分が欠けている。
その顔はゆっくりと私に近づいてきた。口をパクパクさせている。
何かを語りかけたいのだろうが、私には全く聞こえない。

強烈な金縛りに遭う。動けない。
その顔は私のすぐそばに来た。その距離、僅か30センチ。
冷たいミストに当たっている感覚。
『そうか…』
この霊は両隣の部屋と奈津美さんの部屋を行き来しているのだ。
移動の場は限られている。



それまで目を瞑っていた女の霊が、ゆっくりと瞼を開いた。





眼球が無かった。








かなり古い霊に思えた。霊も年月と共に姿や輪郭を見せる表現力が弱くなってゆく。
生きた人間にとってはそれが余計に怖いのだが。


長い時間睨みあった気がする。女の霊は啜り泣きながらゆっくりと元の壁に消えていった。


翌朝、奈津美さんは私の報告を受けると、すぐに部屋を解約した。
もちろん近隣に自殺者が出ていることを伝えただけで、私が見た霊のことは告げなかった。




東京都は年間1万人の変死者(自殺者含む)が出る。
あなたの部屋は大丈夫だろうか。  



BOSS




本日より、スパイ日記の下段で怪奇探偵が復活します。
著作・テレビでお馴染みの山口敏太郎氏が心霊や都市伝説を検証。
乞うご期待であります。




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