●更新日 08/03●






変死者 〜訳あり物件



奈津美さんと近くのファミレスで待ち合わせする。
彼女には、マイソク(借りた時の物件情報)と賃貸契約書を持ってきてもらった。
2001年に消費者契約法が施行されたので、自殺や殺人などの訳あり物件であればこのような記載があるはずだ。






告知事項アリ。
この文言が奈津美さんの物件には無かった。

午後8時、二人でマンションへ向かう。
奈津美さんの部屋の窓を見た。闇が広がる。建物自体に生気が無い。
玄関に回り鍵を開ける彼女の手を止める。
「今日から元の友人の部屋に戻ったほうがいい。明日調べるから。」
「え?…でも、荷物が…」
「あ、そうだったね。じゃ、一度入ろうか。」
私はドアの外で待っていた。

突然、部屋からパンッパンッという音が響く。同時に、奈津美さんの叫び声が聞こえた。
「きゃあ〜!!」
彼女は何も持たずに部屋から飛び出してきた。
「部屋の電気が順番に切れてって…」
彼女を駅まで送る。不動産屋の名刺に携帯の番号が書いてあった。
二十代後半の若い男が出る。案の定、訳アリでは無いととぼけられた。
私は知り合いのサルベージ屋に電話を入れる。


※サルベージ屋
不動産屋の要請により自殺者等が出た物件にバイトを派遣して住まわせる稼業。
数か月「生きた」人間が住めば重要事項説明で訳ありを記載する必要が無くなる。
言わば必要悪のような商売。





ーつづくー




最凶の訳あり物件情報求ム 〜謝礼アリ  BOSS






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