●更新日 04/07●


ある強姦事件 〜事件概要〜



BOSSが先週触れた、ある強姦事件の概要です。

被害者のAさんは、事件当時大学三年生。加害者のHは、19歳の定時制高校生。つまり、未成年です。

また、外国人とのハーフであり、17歳の時に日本に来たため日本語が上手く話せなかったとか。


○強姦事件内容

平成○○年○月○日の午前0時半頃、バイト先より帰宅途中のAさんをHが見かけ、「何見てんだ」と因縁を付けた。「見ていない」というAさんに「お前のしゃべり方がいらいらする。俺を馬鹿にしているのか」などと因縁をつけた。さらに、「タバコを顔に押し当てるぞ。顔をぐちゃぐちゃにしてやる」と脅迫し、午前1時頃に都内のビル敷地内に連れ込んで強姦。強姦後、HはAさんに「警察に知らせたら、お前を殺す」と脅迫した上で解放した。

○その後

Aさんは被害に遭った後、自宅に向かって歩いている途中で、付近の駐車場に車を運転して入ってきた近隣の女性に泣きながら助けを求めた。警察に届けると殺されると言われたことから通報を躊躇っていたAさんを近隣女性が説得し、通報。



その半年後、Hは別件で逮捕(強姦)された際に余罪を追及され、当初は犯行を否認していたものの、DNA鑑定などにより逃げられないと分かると、Aさんの事件内容も認めた。Hは懲役5年の判決を受け、現在服役中。

刑事裁判は以上だが、Hが未成年であったこと。Hの親が親権者としての責任を有していたため、Hと共に損害賠償の連帯債務を有するため、民事訴訟開始。

○Aさんのその後の状況

強姦を受けたことにより、深刻なPTSDを発症。声が出なくなったり、リストカットを繰り返し、時には入院。大学は2年の留年後に休学。また、事件現場が自宅付近だったため、近くを通ると事件がフラッシュバックしてくるため、自宅から全く外出することが出来なくなり、転居を余儀なくされた。

○Aさんの損害


1 診療費など(精神科通院や、投薬など) 

2 大学留年のための学費など 

3 今後の治療費

4 逸失利益(本来だったら2年前に卒業し、就職していた。2年間分の得べかりし収入のこと)

5 慰謝料 

この他に、弁護士費用や雑費などを含めて、3000万円の民事裁判を開始。この民事裁判は2000万円の支払いをせよという結果に終わりました。しかし、Hの親側に付いた弁護士が「事実誤認及び理由不備、審理不尽ないし訴訟手続き上の法令違反のため取り消されるべきである」という、にわかには信じられない理由を付けて控訴。要約すると、




1 Hの親に監督不行き届きなどの責任はない

2 本件強姦事件と、AさんのPTSD発症を医科学的に肯定した資料がない。ゆえに、因果関係を認めるには不足だ。

3 今後の治療費などの金額は本人が言っているだけで、何の立証もない。

4 留年したのは本人の学力不足と怠学のせいかもしれない。また、留年するほど勉強に専念出来ないなら、何で2年も休みながら通っていたのか。また、労働力喪失の全原因が、本件強姦事件にあると認定しているのはおかしい。

5 何故、直ぐに逃げなかったのか。付いて行ったのか。家族に直ぐに助けを求めなかったのか?被害を受けているという切迫感が感じられない。

6 慰謝料が高すぎる。ある強姦殺人の慰謝料よりも高い。経験則に違反する。故に、不当だ。



弁護するのが仕事なのは分かります。しかし、魂の殺人とも言えるレイプ事件の被害者にこんな書面を送りつけても心は痛まないのでしょうか・・・?

この後、Aさんの家に8名もの弁護団で押しかけてきて、「70万円で示談しなさい。しないなら自己破産する」という流れになっています。Aさん自身、疲れ果てていたのと自分の弁護士の薦めも有って合意してしまいましたが、これで終わるならいわゆる「やったもん勝ち」の世の中でしょう。

被害者は虐げられ、加害者は守られるというこの状況、何とか他に方法はないものかと思い、他の弁護士に話を聞いてみることにしました――

つづく




山木



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