●更新日 02/24●


おくりびとがアカデミー賞を取ったので昨年の過去ログよりアンコール。


死を扱う仕事




 

納棺師。映画「おくりびと」で注目された職業だ。今回は主演の本木雅弘さんに演技指導した納棺師の方に話を聞き、死について考えたい。



映画「おくりびと」で演技指導もされたそうで。反響はありましたか?
お伺いする先の中には映画を観た人もけっこういまして、セレモニーをさせていただく前に「映画のようなことなんですか?」と聞かれたりします。終わったあとに「映画のようにしてくれてありがとうございました」という声をたくさん頂きました。
実際、お仕事は映画と同じような感じなんですか?
そうですね。セレモニーとしての流れはだいたい映画のような感じです。ご遺体を清めて着替えや化粧をして、棺にお納めするという流れです。
映画の前半で腐敗した遺体のシーンがありましたね。
警察署とか病院の霊安室で納棺を行う場合、そういうケースになることがあります。
完全に腐敗しきったご遺体もありますよね?
はい。通常、納棺は納棺師一人でやるもので、そういったご遺体であっても一人でやります。ご容態の悪い方であっても、なるべくお着物とかを着せれるように処置を施してから着物の着付けをしたりします。
納棺師として一人前になるまで、どのくらいの期間がかかりますか?
最低限の部分をマスターして一人で出来るようになるまでが、大体3ヶ月から4ヶ月ですね。現場に行けば出来るというものじゃないので、社内にいるスタッフたちをモデルにして手順や着付けの練習をします。そういう研修期間を経て実際にお宅でさせていただくという形です。
納棺師は仕事の依頼をどういう形で受けることになるのでしょう。やはり葬儀社から依頼を受けて?
全てがそういう仕組みではありません。葬儀社はお通夜や告別式を含めた葬儀全般の施工や運営を行い、そのなかでお花や引き出物や料理を用意したりするわけですが、納棺もその一つになります。ご親族の方と打ち合わせて納棺は専門の者を呼んでやるかどうかを決めるわけです。でも、納棺に重きをおく葬儀社の場合は独自にセレモニーとしてやる場合もあります。ですから、葬儀社が独自でやるのか、アウトソーシングで私どものような専門業者に委託するのか分かれることになるわけです。
映画の影響で納棺師になりたいと思った人も多いと思うのですが、希望者は増えましたか?
映画を観たということで問い合わせの電話は増えましたね。
実際に納棺師をやりたい思って始めても、すぐに辞めてしまう人も多いと思いますが?
そういう場合を考えて体験期間というのを設けているんです。実際、一日で辞めるということもありえますので。納棺の現場に同席してもらい、どういうことをやるのかというのを見てもらうんです。そうして、ご親族の心痛というのも空気で感じ取ることになります。その中で自分はこういう仕事をやるんだと実感してもらう。そして、その後、やりたいという気持ちが変わらないのか、これはちょっと難しいかなと思うのか。それを自分で判断してもらいます。
考えていたのとはちょっと違っていたということが無いようにですね。
通常のような納棺の儀ばかりでなく、先ほど申し上げたとおり警察に行かなければならない時もありますからね。日中ですと外も明るくてまだいいのですが、夜中でも一人で霊安室に行ったり、ご遺体と二人きりになったりする場合もあります。ご親族お立会いの中で出来る部分じゃない場合もありますので。そうなると「怖い」と思われる方も当然いらっしゃいますよね。
私たち探偵も依頼者の代わりに警察署で自殺者と対面することもあります。探していた人が遺体となって対峙するのは「怖い」と言うより「切ない」のですが。
そうでしょうね。何年やっても警察署にはできれば行きたくないです。夜、真っ暗な霊安室に行って一人で納棺を行う時など、やっぱり慣れるものではありません。また、そういうご遺体っていうのは大抵、状態が悪くて。出血しているとか、腐乱しているとか。やはりいろんな亡くなり方ってありますよね。事故とか事件でテレビで「水死が」「焼死が」と簡単に言ってますが、実際のそういったご遺体の姿は、普通ではなかなか見る機会が出来ないと思うんです。私たちはそういうご遺体を目の当たりにする仕事なので、ご遺体と二人きりになる空間とかもあるわけです。映画を観て「かっこいいですよねー」という人もいるんですけど。
ご遺体に着付けをするのは難しそうですね。
着せるものも白装束ばかりではなく、ご親族の希望で背広だったり和服だったりワンピースだったりするんですよ。基本的には故人様が生前これが好きだったんで着せてほしいというご要望にお答えすることになります。例えば、お嫁に行く前の若い女性の方が亡くなった時など、ご両親の希望でウェディングドレスを着せてあげることもあります。その他、ゴルフウェアがいいとか、整備士さんでしたらつなぎがいいとか、着せるものの種類は多いです。お寺さんの方が亡くなったら、法衣を着せる場合もあります。稀にぴっちりとしたスリムなジーンズなどは穿かせるのも大変ですけど(笑)。
この仕事をしていたからこそ「死」について理解できたことはありますか?
映画のCMで「生きること、愛することの大切さ」というフレーズが流れていたんですけど、その通りのことを感じます。病気や怪我で亡くなられる方、年を取られて亡くなられる方、いろいろいらっしゃいますが、やはり、中には若くして亡くなる方もいらっしゃいます。朝「いってきます」と元気に家を出たのに、夜には亡くなられている。そういう現実を目の当たりにするんです。ですから、朝、起きて、夜「おやすみ」と言って、次の日に目覚めて「今日も一日頑張ろう」と思う。そういう当たり前のことに、本当に感謝する気持ちになりますね。仕事を通して命の尊さという部分を 本当に痛感させられます。
非常に失礼な質問なのですが、この仕事の魅力はなんでしょうか?
その方の人生最後の場に立ち合わせてもらうことで、その方が生前どんな風に生きてこられたのか、触れ合うご家族の方々とどんな風に接していたのか、この方がどれだけ愛されていたのか・・・そういったものがすごく見えたり、さまざまなことを感じられます。そして、一番最後の場でご親族から涙ながらに感謝の言葉をいただくと、本当にありがたいなぁと思います。感謝される仕事はたくさんあると思いますが、私たちは感謝の言葉と一緒に、お金では買えないものを頂いているといいますか、そんなことを感じますね。
このお仕事について家族や友人からの反対はありましたか?
周りから反対されることは多いようです。今いるスタッフは30代が一番多いんですけど、家庭のある方の場合、子供が「お父さん、お母さんは何の仕事やってるの?」と聞かれて胸を張って言えないといいますか。
若い女性の納棺師もいるんですか?
います。というより、スタッフの半分くらいが女性です。ご遺体が女性だった場合、女性の納棺師に来てもらいたいという要望もありますので。
最後に、納棺師という仕事を目指す人に一言いただけますか。
まず、お金のための仕事というだけではこの仕事は長続きしないと思います。正直、私共の仕事ってお金じゃない部分が多いので。本当にこの仕事自体を好きになれる方じゃないとできないと思います。ちょっとした興味本位では、すぐ辞めてしまうことになりかねません。心の底から人様のお役にたちたいとか、そういう気持ちを持っている方が増えていただければ、私共としてもありがたいと思います。


 




中学生の頃、今では有名な「大和コフィン」という棺桶製造の会社で廃材片づけのアルバイトをしていた。
倉庫には山のように積まれた棺桶。
休憩時間はこっそり棺桶の中に入り、昼寝をしていた。
夏であっても棺桶の中はひんやりとしていた。

今、理不尽な死に方をする人が増えた。断末魔で『どうして!?』と叫びながら死ぬ人が増えた。
昨日も、むしゃくしゃしていたという理由だけでたまたま歩道を歩いていたサラリーマンが轢き殺された。


今年、探偵ファイルに投稿してくれていた女性二人が自殺した。







過去、撮影の時に何度か顔を合わせただけで、ちゃんと会話したことがなかった…。





命の重さは年々、軽くなっている。
いや、軽くて当然なのだろうか。
知らずして踏みつぶされる蟻と同じ価値しか無いのだろうか。





BOSS

 




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