●更新日 02/03●


海外への農業技術流出問題、現場からの声


先日の記事で扱った、日本の農業技術の海外への流出に関して、貴重なご意見を頂戴した。今回は、その一部を紹介したい。

海外への流出だけでなく、国内での品種管理にも問題があると、国内の特許事務に企業で携わる人物から指摘があった。その事例として挙げられていたのは、青森県で開発された新品種のリンゴが、登録料の未納が原因で農水省に品種登録を取り消されたという問題である。知的財産という観点から、より厳密な対応がなされるべきであるという。



一方、JAの営農担当者は、国内での問題は農業従事者にも責任があると指摘する。イチゴの生産現場では、一部の農家がきちんと県外許諾を取らずに生産しているとのことだ。このように問題意識の高くない人々が、海外への流出にも結果として加担してしまっているのではないかという。

新品種の開発に携わる機関の研究員からも、意見が寄せられた。海外への流出の一因は、品種の育成者と生産者が異なるという点ではないかという。技術や資本の面で、生産者自身による品種の育成は困難であり、新品種の普及や市場での評価を得ることも容易ではない。すると、育成機関が依頼して生産してもらうという構図になり、農家の権利意識が乏しくなるのではないかとのことである。

また、前回の記事では触れられなかったが、外国人の研修生を雇うことの背景には農家の人手不足があると、JA関係者は指摘した。そのことは、4Hクラブ関係者からのメールにも記されていた。国内の失業者が増加する一方、研修という名目で訪れた海外からの人々が農業で雇用の機会を得て、様々なトラブルも生じている。これは社会の仕組みの問題であり、農業従事者以外も考えていかなければならないことだ。



前出のJAの営農担当者も、消費者の問題を挙げた。海外に流出した技術によって栽培された農作物が日本に輸入され消費されているという現実を、消費者が認識する必要があるという。外国からの輸入に依存することで日本の食生活が維持されているというのは事実であり、今回扱った問題は消費者にとっても他人事ではない。

技術の流出に対して、生産に携わる人々の認識や対応を改めていくこと、研修制度や品種管理のあり方を見直すことの必要性は明らかだろう。だが、現場が一切の責任を負えば解決するという問題でもない。消費者がどのような食生活を望み選択していくのか、それこそが問われている。




高橋



◇上記のタグを自分のサイトに張ってリンクしよう!


探偵ファイルのトップへ戻る

前の記事
今月のインデックス
次の記事