●更新日 12/12●


昭和のミステリー「三億円事件」新説


昭和最大のミステリーと言われる「三億円事件」発生から40年が経過しようとしている。

1968年12月10日、銀行の現金輸送車に積まれていた三億円が、白バイ警官姿の犯人の策略によって持ち去られた。犯人が逃走に使用した盗難車が発見された時、車内にあったトランクの中身は既に空になっていた。

当時、このトランクに付着していた泥に注目が集まった。その成分に似た土のある近辺に、犯人ではないかと目される人物が住んでいたためである。しかも、三億円事件の犯人と背格好が近く、父親は白バイ警官であったという。だが、その人物は事件後に自殺し、結局のところ犯人であると断定されるには至らなかった。

この事件について、これまでに提起されているものとは異なる説があるという。取材に協力して現地を案内してくれたTさんは、三億円事件当時、東京都北区の滝野川警察署近辺に住んでいた。そこでTさんが体験した不思議な出来事がある。

かつてTさんが住んでいた近辺

事件発生前、Tさんが近所を散歩していると、巡回中の顔なじみの巡査に出会った。当時は安全確認を目的に、警察が各家庭を定期的に訪問する習慣があったため、巡査とも自然と顔なじみになっていたという。挨拶を交わすと、巡査は一緒にいた若い男性警官を紹介した。今度新たに配属されてきた人物で、研修も兼ねて一緒に巡回しているとのこと。新人警官は、自分の実家は埼玉県川口市で農業を営んでいると自己紹介した。

Tさんが新人警官に出会った場所

事件が発生し、犯人の似顔絵がテレビに映った時、Tさんはハッとした。その顔が、先日紹介された新人警官にそっくりであることに気づいたからだ。事件からしばらく経過したある日、巡査がいつものようにTさんの自宅にやってきた。Tさんは遠まわしに、「この間お目にかかった若い方、もうお仕事に慣れましたか」と尋ねた。すると巡査は、「ちょっと事情があって、あいつは急に辞めたんですよ」と答えたという。

偶然は重なるものだ。事件から半年ほど経過した頃、Tさんは友人のMさんと久々に会って談笑していた。その時、Mさんが事件の話を始めた。Mさんの家は埼玉県川口市で、近辺にいくつもの農家があった。そのうちの一軒は息子が都内で警官になったというのだが、しばらくして退職し、実家にも戻ってこなくなったとか。

しかも事件の直後、その家の垣根の向こうから一日中、焚き火の煙が上がっていたそうだ。こんなにも長時間にわたって焚き火をしていたことなど今までなく、Mさんは不思議に思った。まるで、証拠隠滅を図るために何かを必死に燃やし続けているかのようだ、と。この話を聞いてTさんは、あの新人警官のことを咄嗟に思い出したという。

Tさんを最寄り駅まで送って別れた後、日が暮れるのを待って再度現場付近を歩いた。この日は夕方からポツポツと雨が降り出し、次第に雨脚が強くなってきていた。昼間にTさんと歩いた一帯は街灯も少ないため闇に包まれ、視界が悪い。雨の降る中を犯人が消えていった、事件の夜の闇を想起せずにはいられなかった。




高橋



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