●更新日 12/01●




クリスマスの苦い思い出をお聞かせください





投稿お待ちします。下は私の例です。







クリスマスイブ。彼女とロフトでサングラスを物色していた。そこへ、まったく知らない中国人の若い女が現れ、私に向かって「我無為楊情×∞!!」と叫び、何やらひどく怒っている。繰り返し言っておくが、本当にまったく知らない女だ。

そして、女は私に紙袋を突きつけた。あっけに取られ、思わずその紙袋を受け取ってしまった。女は中国語でわめきながら彼女を一瞥して去っていった。おそるおそるその紙袋を開けた。銀色に光るケースにビニールのフタ。パカッと開けてみたら強烈な臭いがあたり一面に立ちこめた。

それは何と


青梗菜(ちんげんさい)スープだった。


大多数の日本人が受け付けない、アノ臭いだ。私は急いでフタを閉め、鼻をつまんでいる店員や客にわびて足早にロフトを出た。
案の定、彼女は烈火のごとく怒っている。私がいくら無実を訴えても、聞く耳を持ってくれない。
私はその紙袋を東急文化会館のロッカーに入れた。持って帰るのも何やら違う気がするし、捨ててしまおうかとも思ったが、事件がよからぬ方向に発展した時、有力な物的証拠になるような気もした。

翌日、園田にその紙袋を取ってこさせた。そして、「そのスープ、彼女が作ってくれたんだけど、おれは腹がいっぱいだから、おまえ食べろ」と言って食べさせた。園田はものすごく嫌な顔をしながら食べた。そして私にこう質問した。「BOSS、いつから彼女が中国人になったんですか?」私は、「バカヤロウ、彼女が料理教室で作ったんだ」と答えた。

ふと紙袋を見ると、渋谷○楽園と書いている。何の店だろう、と思い、記されている住所に向かった。そこは、小綺麗な焼肉屋だった。小腹が空いていたことも手伝ってテーブルに座った。するとあの女がチャイナ服を着て働いているではないか。女は私を見つけると、ダッシュで近寄ってきた。

私は名刺を差し出して、自分の顔と名刺を交互に指差した。そして、やっと誤解が解けた。どうやらこの女は私とそっくりな男にたぶらかされたらしい。

焼肉をたらふく食べて大満足で店を出た。あとはこの状況を自分の彼女に説明したら終わりだ。彼女が疑ったら一緒にこの店に来て女に釈明させればいい。
すると、店の女が私を追いかけてきた。相変わらず何を言っているのかさっぱり分からなかったが、私を見る目が潤んでいる。よく見るとソニン似でかなりの上玉である。私の下半身は即座に反応した。

自分を捨てた男と私がウリふたつなのだから、私に行為、いや好意を持つのは当然だ。
私は片言の中国語で閉店後の11時にここで待つ、と伝えた。二つ返事だった。
あとは隣の薬屋で栄養ドリンクを飲んで時を待つばかりだ。チャイナドレスから伸びた白い足が瞼に焼きついて離れない。

あと5分で約束の11時だ。待ちくたびれてヘトヘトだった。聖夜に小雨がぱらつきだした。私はドンキホーテで一本200円の安い傘 を買って焼肉屋の前に佇んだ。そこへ

本物の彼女が偶然通りかかった。

口から出そうになった心臓を必死で飲み込んだ。
「あれ?何してるの?」と彼女は言った。とにかくこの場を早く離れなければと思い、彼女の質問を無視して足早に焼肉屋の角を曲がった。彼女も私のあとをうまくついてきてくれた。
が、



ガラッ

何と、その路地には焼肉屋の従業員通用口があり、運悪く女が出てきて、私を見つけるなり

腕に抱きついてきた。

こんなことがあっていいのだろうか。まるでテレビのトレンディドラマじゃないか。
彼女は持っていたものを私の頭に叩きつけた。頭に鈍い痛みが走った。いや、それよりも何かぬめぬめして熱い。まさか、出血!?私は恐る恐る頭に手をやった。頭から全身にかけて吹き出る赤茶色の液体。脳みそ?



今年のクリスマスは青梗菜のスープに始まり、ミネストローネのスープで終わった。




BOSS





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