●更新日 10/27●


辰吉再起戦TKO勝利! 試合詳細&写真レポート!


試合開始予定時間の16時、スタジアムのリングサイド席は日本人の応援団で既にギッシリ。
当日券で入った客は、否応無しに2階席へ上げられていた。
応援に駆け付けた中には、布袋寅泰の姿も。



試合直前にリング裏にて


直前までリング裏でウォーミングアップ中の辰吉。フットワークは現役中と同じで非常に軽やか。
ネコかと思う位、全くフットワークに音が立たない。そして動きが速い。
辰吉の試合は第二試合だが、興行開幕の宣言とともに「本日は日本のスーパースター、元WBCの辰吉丈一郎が試合をします!」とタイ語で盛んにアナウンスが入る。



準備中のパランチャイ選手は勝つ気満々に見えた

ラジャダムヌンの選手控え室は、かなり汚い。
果たして辰吉もこんなところで他の選手達と混じって支度するのかと見に行ったら、対戦相手のパランチャイ選手しかいなかった。辰吉は、マスコミの対応も有り特別室で準備をしていた。



関係者はピリピリムードだった

第1試合4R目に辰吉が会場に姿を現す。
試合そっちのけで、辰吉に拍手が起るが、会場裏に行ってしまう。



すごい応援に見守られる

亀田のようにオラオラ!な感じではなく、飄々としたクールなオーラをまとって入場。
そんなクールさが逆に底知れない強さを伺わせる感じ。
辰吉入場とともに辰吉コールが会場の四方八方からわき起こる。



いろいろな最終チェックを行っている

リングに上がる……5年ぶりの試合を目前にして、辰吉は何を考えるのか。



ムエタイの試合なら「ワイクルー」という踊りの時間

試合前、丁寧に四方の観客に向かって一礼を繰り返す辰吉。



試合開始直後

遂に試合開始。
1R、最初から辰吉の方がフットワークも非常に軽く、即パランチャイに接触。
パランチャイもジャブで応戦するが、辰吉の方がさすが経験が上。すぐに自分の流れに持って行く。
網膜剥離って治ってる? ちゃんと見えてるじゃん! という感想。



辰吉の顔が腫れてきている

パランチャイのジャブもよく見えていて、低いクリンチで上手くかわして大空振りにさせる。
その隙に、ジャブとアッパー、早い連打のコンビネーション。
しかし、攻撃の時に出来る隙に、パランチャイも負けじとジャブやフックで辰吉の顔面を叩く。
中盤、辰吉が身を引いた時に足がもつれて転んでしまう。
(後でセコンドに聞いたところ、ムエタイ用のリングなのでステップを踏むとリング面が上下に揺れてしまうなど、安定性が国際式ボクシングと違ってかなり悪いため、足を取られてしまったとのこと)

辰吉が転んだ事で場内が騒然となり、女性客の悲鳴が上がる。そんなハラハラの状態でゴング。



じわじわとパランチャイを追い詰める


2R目。もう観客は全員総立ち。開始1分頃にまたもや激しい応酬戦の打ち合いとなる。
前日、パランチャイは判定で勝つつもりだと答えていたものの、焦りが出始めたのか、いかにもKO狙いの体勢になってきて、辰吉との距離を取らなくなる。

辰吉の左頬にパランチャイのジャブがうまく入り、辰吉の目の周りが赤く腫れて来るが、パランチャイのボディや左頬に入るパンチの方が倍多い。
そしてパランチャイが辰吉のパンチを受けて吹っ飛ぶように前のめりに手をつきダウン。
カウント6でファイティングポーズを取り直したものの、もう一度の打ち合いになった時、辰吉の顔面にジャブを入れたのにもかかわらず、カエルの面に水のような状態で辰吉がすかさずパランチャイの左顎にストレートを決める。
その瞬間に若干白目を剥きながら倒れたパランチャイを見て、レフリーがストップ。
そこでTKOにて辰吉の勝ちとなったのだ。



かなりダメージを受けている様子だった


ガッカリしながらふらふらとリングを下りるパランチャイ選手。
「辰吉は強い! こっちだって何度も顔面にヒットさせたのに、全然効かず倒れてくれない……そして辰吉のパンチは重い。正直、2R目でこっちの方がしんどくなって来てしまって…。右顎に入ったとき、本当に目の前が真っ白になりました」
玉砕したが爽快な気分なのか、悔しさは微塵も見受けられず。
パランチャイははにかんだままスタジアムから出て行った。



布袋寅泰がやってくる直前


控え室での辰吉はご機嫌なのか20分位、一人ボケ突っ込みを交えて記者会見に応じていた。
「目を痛めて、足傷めて、頭傷めて、心も傷めてなあ……」
「俺20年ボクシングしかやってないんや。せやのに1年で1戦ってどう思う? おかしいやろ?俺、もっとキャリア(戦績)が欲しいんや。もっと試合したいんや。タイはリングもあんなんやったし、日本と全然違うけど、試合出来るんやったらまたタイでやるつもりや」
「父ちゃん、今頃ウマい酒でも飲んでるんちゃうかー? イヤ、息子の事で肩身の狭い思いしてたらどうしよう……」

などなど、辰吉節で長く語っていた。
全体の印象では、「純粋にボクシングを愛している不器用な大阪の兄ちゃん」という感じ。



ムエタイでもボクシングでも強かったウィラポン選手


辰吉が控え室に行ってしまうと、ウィラポン選手にファンが詰めかけていた。そんなファン達に丁寧に対応する。14年間というキャリアを誇り、今年6月に引退したばかりでまだ大人気なのだ。



何処までも優しく紳士なウィラポン選手

今日の辰吉の試合はどうだったか感想を聞いてみたところ
「僕が戦った頃と同じ、辰吉だった。辰吉はまだまだ戦える」
では、またウィラポンさんも辰吉と試合してくれますか?
「ううう、僕はもう引退したからダメです……」
困った顔になる。純粋無垢で可愛い感じのウィラポン選手だった。

試合後控え室で今回の興行を大成功させたアンモー会長から。
「辰吉はノンタイトルとは言え、現役ラジャダムヌンのランカーとの試合にKOで勝った。この功績をラジャダムヌン協会に提出し、辰吉はラジャダムヌンスタジアムのバンダム級選手のランキングに入る。ランクは1〜6位の間になる。練習をこれからも続けて行けば、2、3ヶ月後にはラジャダムヌンスタジアムのバンダム級チャンピオン戦に出られるようになるだろう」

JCBが試合をするなと言って来たが?
「関係ない。私は何十年もこの仕事をし、辰吉の実力も見て来ていたから、辰吉は絶対大丈夫だと自信を持っていた。今回の試合でJCBも辰吉の実力を認識するだろう。辰吉はまた世界チャンプになる事も夢ではない」


試合を終えて帰って行く辰吉の姿は何だか仙人ぽかったです。
死ぬまでボクシングを続けて欲しいなと思いましたね。



レポート・インタビュー・写真:犬巻カオル  構成:梅宮貴子




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