●更新日 08/18●


BOSSに文句をつける。


花魁淵に行ってまいりました。BOSSと一緒に。
それで、ちょっと文句を言いたくなったので書かせてもらおうかと思います。

花魁淵での取材の前に奥多摩で腹ごしらえをすることになりまして、中華料理屋に入ったんです。
しかし、これから関東最凶とか言われる心霊スポットへ向かうわけですから、一行は自然と無口になっておりました。
ところが、一人だけ元気な人がおりまして、いうまでもなくBOSSその人。

店内に入るや否や、身振り手振りを交えて元気一杯にしゃべりだしたBOSSは、マスターやおかみさんとすぐに意気投合。テンションを上げ続けるBOSSの話に周囲の客までが全注目。
それに負けじと客やマスターはあれもこれもと怪談話をはじめ、
奥多摩の中華料理店は百物語会場と化してしまいました。
帰りかけていたお姉さんまでもが玄関から首だけを店内に残して聞き入る始末です。

しかし話題の中心にいるのはBOSSですから、BOSSがしゃべり休むと妙な沈黙が生まれてしまいます。みな緊張しながらBOSSの言葉を待つのですが、それでもBOSSはしゃべらない。
するとそのうち客の誰かが「そういえばね……」と無理矢理のようにご当地の怪談話をはじめます。

(あ〜。これは……)と、さすがに鈍い私も気がつきました。
いつぞやBOSSが話していた「探偵の聞き込み術」のひとつ。

『会話に引き込んでおきながら勝手にしゃべらせておいて自分は休む。そっちのほうが10倍収穫がある。』

BOSSの語りは、きっかけ上手で聞き上手。しかも出される料理には舌鼓をうちながらうまいうまいを連発。マスターはその技にまんまと乗せられ、サービス品まで次々と出してくれます。
やがて店を出る時には「頑張ってこいよ!」「祟られないでね!」と、店内の皆がエールを送ってくれ、まるで壮行会のようになっていました。

BOSSは当然、探偵ファイルのことなど一言も発していません。
何やってる人なの? と突っ込まれてものらりくらりで身分をうやむやにします。
しかも注文した日本酒を『これはお神酒です。みなさんの魔をはらってごらんいれます。これから先は怖い話は無しですよ』みんなのおでこにペタペタとやる演出。
その人心掌握術は確かにプロの探偵。

っていうか、悪く言えば稀代の詐欺師。
あなたみたいなレベルには到底いきませんよ、私。根が善人だし。

店を出た後、BOSSは溜息つきながら私に言いました。
……ほんとはもっと現場の近くで取材したかったんだけどな。人も住んでないとこだから仕方ないな。

あのですね。
BOSSの聞き込み術の一端を目にできたのはありがたいですが、

飯を食う時くらい気を抜いてください。

こっちは緊張しっぱなしでご飯がマズイです



九坪



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