●更新日 08/17●


特捜班心霊紀行 「新井さんの家」


・・・Day side・・・

どれほど奇妙な現象が起きようと、昼は「生きている人間の時間」だ。
朝、再び訪れた「新井邸」。

何の変哲もない廃屋。

昼間に見ると荒れ果てぶりがよくわかる。

「新井邸」についての調査を開始しよう。
まず『あの廃屋が本当に「新井邸」なのか?』という点の確認からだ。
あそこを「新井家」とする根拠は、今のところ人の噂だけなのだ。

古い地図を引っ張り出して確認してみた。
「 昭和63年発刊の住宅地図」より

地図には「新井 別宅」とある。
昭和63年、つまり20年前までは間違いなくあの廃屋は「新井家の別宅」だったらしい。

ここは昔、下久保ダム(神流湖)の建設に反対する新井さんが、抗議活動として家族ととも居を構えた別荘なのだそうです……しかし、このご主人は精神に異常をきたしてしまい、チェーンソーで家族全員を惨殺し、自分も……

しかし、もしそんな事件が本当にあったのだとしたら、犯罪史に残る凄惨な事件だ。ダムの建設史にも残るだろう。近隣の住人が知らないわけがない。
この廃屋のことを知る人を探しつつ、聞き込みをしてみることにした。

とはいえ、聞き込みには難渋することになった。
「新井邸」の まわりは山ばかり。

話を聞こうにも、そもそも人が住んでいないのだ。
どうにか得ることができた証言も、曖昧なものばかり。
ただ、ダム建設時のことを知る人はこんなことを話してくれた。

・ダム建設の頃、反対する人は多かったが、賛成する人もまた多かったんだよ。
そもそも、この周辺は農業が主産業だったんだが、山に囲まれた立地のせいで、それも伸び悩んでいてね。「もう少し立地のいい場所に引っ越せるなら……」と考える人は多かったんだ 。

そういう事情なら「ダム建設に反対のあまり別宅を構え、一家を惨殺してしまうほど精神を病んでしまう」というのは、いささか信憑性に欠けるのではないだろうか?

そして、さらに調べを進めるうち、神流湖にほど近い町で起こったある事件に行きあたった。


その事件の発生は17年前。

精神病を患っていた男性が、鎌や包丁を手に近隣の農家を次々と襲ったのだ。
錯乱し、町人10人を次々と殺傷した犯人は、最後に立てこもった民家に自ら放火し、焼身自殺を遂げたのだという。
クリックで拡大。

・「神流湖」にほど近い場所
・精神病者の突然の凶行
・複数の被害者
・最後は犯人が自殺

奇妙に噂と符号する。
静かな田舎町。この事件は住人たちに大きな衝撃を与えたことだろう。
そしてダム湖であり、自殺者の多い「神流湖」。
ひょっとして、この「新井邸心霊譚」。
これらの立地条件と、17年前の殺傷事件が結びついてできあがったものではないのだろうか?

しかし、この仮説には弱点がある。
「新井さんの家」の噂にある事件は、下久保ダム建設時(昭和43年頃)、つまり約40年前に起こったものだといわれる。一方、仮説の事件の発生は17年前。時期が合わないのだ。

とはいえ人の噂のことだ。時期があいまいなまま心霊譚として広まった可能性もある。
加えて、噂のような凄惨な事件のことを、地元で知る人がいないという状況。
それらから考えれば、どうやらこの心霊スポット「新井さんの家」。
いくつかの条件が重なっただけの、でたらめである可能性が高そうだ。

だが、それでは昨夜のカメラバッテリーの異常はなんだったのだろう?

まるで撮影を邪魔するかのようなバッテリーの異常。

もしや、無理矢理撮影してきた写真には何かが写りこんでいるのだろうか?
しかし、こればかりは霊感も何もない調査員としては検証のしようがない。
撮影した写真を少し大きめに掲載しておくことにする。
読者の方で霊感をお持ちの方がいれば、ぜひご一覧いただきたい。









噂では「新井さんの家から何かを持ち帰ると、後日、「返せ!」という電話がかかってくる」のだそうだ。

(写真を“とった”者のもとにも『新井さんからの電話』はくるのかな?)
(そんなばかな……ね)

調査員は、そんなことを考えつつ、この「日本最大の心霊スポット」を後にした。


※特捜班では今後も心霊調査を行っていきます。
 検証してほしい心霊スポットの情報がありましたらご連絡ください。お待ちしております。




特捜班:九坪




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