●更新日 06/11●


秋葉原無差別殺人 犯人はみんなのオモチャ


秋葉原の無差別殺傷事件は、マスコミでも大きく取り上げられている。

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この事件に関する現時点までの報道は、果たして適切であったと言えるだろうか。探偵ファイルでは、都内の大学病院に勤務する精神科医に電話取材した。以下は、その概略である。

まず、この事件が大きな注目を集めた理由だ。無差別殺傷事件であったという点だけでなく、場所が秋葉原だったということも挙げられるだろう。この点について同氏は言う、「秋葉原というと、最近のアニメやゲームの規制問題とも関連して、マスコミが否定的な印象操作を繰り返しています。こういう報道姿勢は人々の興味を掻き立てる反面、物事の特定の側面だけを誇張して、全体像を見失う危険性があります」

これまでの報道を振り返ると、加藤智大容疑者の学生時代の卒業アルバムや友人等の証言に基づいて、容疑者がオタクであったらしいという点が強調されて報じられている。また、事件現場で一部のマスコミが、容疑者の外見がオタク風ではなかったかと聞き込みをしていた、秋葉原らしい格好の人物を背景に入れて撮影しようと必死に探していたといった情報もある。

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精神科医は更に指摘する。「「異常犯罪」とされる事件では、容疑者の人物像の描き方には主に二つの傾向があると考えます。第一に、容疑者の性格や日頃の行動が常軌を逸していることを、人々もマスコミも密かに期待しています。「あぁ、やっぱり異常者だったんだ」と結論して納得するわけですね。もう一つは、周囲の関係者にインタビューして、「あの人が・・・信じられない」という証言を得るパターンです。この場合、日常の言動と犯行とのギャップが話題になります。この二つの傾向は、矛盾するどころか、補完的でさえあります。「人前ではごく平凡だった容疑者には、もう一つの恐ろしい側面があった」とすることができるからです。」

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この指摘も、今回の報道に見事に当てはまる。容疑者はオタクらしいという上記の説と並んで、容疑者は派遣先では無口な若者だったという証言を共同通信が記事として配信している。「周囲は、普段の印象と引き起こした凶行との落差に驚きを隠せない様子だ」、「おとなしい性格で、あまりしゃべらなかったが、まじめに働いていた。事件を聞き信じられない」とある。

精神科医による第三の指摘は、ネットの利用に関するものだ。「今回も犯行予告があったらしいと騒ぎになっていますが、これも2ちゃんねるをはじめネット利用者に対するマスコミのレッテル貼りでしょう。毎日のように各地で起きている事件の多くは、予告もなくなされます。ネットにアクセスできる、あるいはその頻度が高い人々が容疑者の場合に、ネット上での犯行予告もなされやすいということです。その点を無視して、ネットへの書き込みという行為自体におかしな評価を与えることは明らかに不当です」

人々はマスコミに対して「真実の究明」と「分かりやすい報道」を求めがちだ。そうした期待を背景になされる報道では、ある種のバイアスがかかった情報が配信され、あたかも唯一の真実であるかのように見なされてしまうこともある。それは結果として、事件の真相解明から遠ざかるという皮肉な結果を招くことになるのではないだろうか。



高橋



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