●更新日 05/15●
子供の喧嘩のようなこの裁判。事件のあらすじは前回のとおり。
……キリがない。 そのせいなのか、佐野くんは4月末で退職している。
これらの情報を集めた上で、最後に原告の佐野君に話を聞いてみた。 ただし、佐野くんには、記者がすでに事情を調べていることは伝えずに。 “なにも知らない記者”に対して、どんなことを話してくれるのだろうか? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【佐野くんの言い分】 「言いたいことは訴状の中に書いているんですけれど、それ以外にもいろいろあるんです。」 ――そうなんですか? 「小野寺は私に『仕事してない』って言いましたけど、そもそも、あの職場にはほとんど仕事がないんです。そんななかで『おまえは仕事をしない』なんて言われるような筋合いはないんですよ。 また小野寺は『勤務中に耳栓をしていた』なんてことも言ってますが、耳栓をしていてもちゃんと周りの音は聞こえていて業務に支障はありません。 確かにヒマな時間に自分の勉強はしていましたが、そんなことは職場のみんながやっています。インターネットで遊んだり、ゲームをしたりね。あの職場は、本当に仕事が無いんですよ。」 ――なるほど。しかし、その言いようでは会社の人が聞いたら怒りませんか? まるで「この仕事はヒマだからサボってもいいんだ」と言う風に聞こえます。私の価値観かもしれませんが…… 「仕事の内容や実態をわかっていないあなたの価値観で評してほしくはないです。」 ――そうですか。 (誰が聞いてもそう思うんじゃないかなあ?) 「で、小野寺が影でボクの悪口を言っているというのを聞きつけて、それを本人に問い詰めたら、ボクは声を荒げてはいないのに小野寺が大声を出し、それで口喧嘩になったんです。」 ――そうなんですか。 (あ……嘘ついた。)
(裁判の文書では自分の声量については一言も書いていないし……「口喧嘩を吹っかけたのは自分の方」ということは隠しておきたいんだろうな。) 「で、上司が間に入って話し合いの席が設けられたんですが、その上司も完全に小野寺側に立った話し合いだったんです。これは小野寺と仲のいい同僚が会社や上司に私の悪い評価を吹き込んだせいだと思います。」 ――なるほど。 「その謝罪の席で小野寺は一応謝ったんですが、到底、謝罪するような態度じゃなかったんですよ。不貞腐れた様子で、とても謝罪 しているような態度じゃなかったんです。」 ――はあ。そうなんですか。 (これは、本当なんだろうなあ。)
「ボクとしては、この仕事は先ほども言ったようにヒマで楽な仕事だったので失いたくなかったんです。で、その時は謝罪を“聞いた”ということです。受け入れてはいません。」 ――そうなんですか。 (また嘘ついた。)
(どうも正直じゃないなあ、この人。 自分の気分で事実を曲げるクセがあるみたいだ。) 「大体、ボクは裁判なんてしたいと思っていませんでした。なんとか訴訟を避けようとしていたんです。 実際、裁判の最初と途中に、和解のための通知書を送っているんです。ところが小野寺はそれを2回とも無視しました。それで、しかたなく訴訟という形になったんです。その通知書は裁判資料には出していませんけどね。」 ――そうですか。それじゃあ私は見れませんね。 (まあ、その通知書、すでにこちらの手元にあるんだけどね。) 内容を、簡単に言うと、
もっと簡単に言うと、
(普通“和解の提案”といえば「お互いに譲歩」というものなんだけど……これじゃ“和解の提案”というより“脅迫”に近いなあ。) ――なるほど。では最後にお聞きしたいんですが、今回の件に関して「こういう点が自分も良くなかったかなあ」など、佐野さん側に反省すべき点はあるでしょうか? 「今回の件に関しては一切ありませんね。」 ――では、もし訴えが棄却されたら? 「もちろん控訴します。」 ――そうですか。 「まあ、今までの裁判の感触では棄却というのはあり得ないですね。請求どおりの30万は無理でしょうけど。この裁判を起したことに意味があるんです。『小野寺が違法な発言をした』ということが認められれば、金額は5万でも10万でも構わないと思っています。」 ――そうですか。どうも、わざわざお話いただいてありがとうございました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 前評判はともかく「本人に会って話を聞けば、意外にいい奴かもしれない。」などと期待していたのだが、やっぱりそんなことはなかった。 「不正直」な上に「自己中心的」で「自分本位」。加えて「常に上から目線」。 取材として普通に話を聞いているだけなのに、ムカムカしてくるというのも珍しい。 なるほど、あれでは職場でも嫌われるだろう。
要するに、この原告の佐野くん。 ただの痛いガキ。 改まった口調でもっともらしく書き綴った訴状も、今となっては「プライドを傷つけられたガキが地団駄を踏んでいる」としか読み取れない。 しかし、じゃあ小野寺さんはというと、こっちだって大人だとは言い難い。 相手が「痛いガキ」だとわかっているのだから、適当にあしらっておけばいいものを、下手に挑発するような態度をとるからこういうことになる。 さて、現在進行中の「ガキvsガキ」。 裁判官はどのようにジャッジするのであろうか? 判決は今月の20日ごろに言い渡される。 (続く) 特捜班:九坪 |
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