●更新日 ０５／１３●
「キモイ」と言ったら３０万円
※これは現在進行中で、実際に争われている裁判のお話です。
「バカ」だの「ボケ」だの「キモイ」だの。
悪口を言われれば気分が悪くなるのは当たり前。
腹をたてて「訴えてやる！」などと息巻いたりす人もいるが、実際に訴える人は滅多にいない。
しかし、ここに悪口を言われたことで、慰謝料３０万円の訴訟を起した人がいる。
※訴状より
悪口を言われることくらい、日常生活を送っていればよくあることで、普通は気にしないか、聞き流してしまう。たまに過剰反応する人も、日がたつにつれ「そんなこと言われたっけ？」と忘れてしまうのが普通。
これを裁判で訴えたというのだから非日常的な話だ。
しかし、表面上は非日常的な話でも、当人同士には深い因縁や確執があるのかもしれない。
その辺りを探ってみようと思う。
まずは裁判所の提出された資料をもとに、この事件のあらすじを簡単にまとめてみよう。
舞台となったのは電話の応対を業務とする某コールセンター。
訴えた原告は佐野さん（仮名）２６歳の男性。
このコールセンターで働きながら、大学院で法律を勉強中。
訴えられた被告は小野寺さん（仮名）２２歳の女性。
勤務歴は浅く、まだ新人。この職場では佐野君よりかなり後輩。
～①～
小野寺さんは日頃から佐野君の勤務態度に不満をもっていた。
挙げはじめればきりがないが、彼の働きぶりを見ていると、
・コールセンターだというのに、勤務中、耳栓をして自分の勉強を優先させていたし。
・時間になると自分がすべき仕事の処理を残したままで、さっさと帰ってしまっていたし。
・他の人の仕事を、全然手伝おうとしなかったし。
また、他の同僚も彼の勤務態度や性格には、いい印象をもっていない様子だった
そんなわけで、小野寺さんは同僚に佐野君への愚痴や悪口をもらしていた。
～②～
あるとき、佐野くんは「小野寺さんが、影で佐野くんの悪口を言いふらしている。」という噂を耳にした。小野寺さんが「佐野はキモイ」「佐野はシカトの対象だ」などと周囲に言いふらしているというのだ。
～③～
佐野くんは、皆がいる前で「悪口を言ってるって、どういうつもり？」と 直接、小野寺さんへ問いただした。それに対して小野寺さんは、
「はああああっ！？」と、大声をあげる。
※以下、二人のやりとり。（青文字：佐野 赤文字：小野寺）
お前、普段の行動を考えてみろよっ！
普段の行動ってなんだよ？
てめぇ、わかんねぇのかよ！
わからない。具体的に言えよ。
今、勤務中なんだよ。お前、やるんだったらあとでやれよ！ ふざけんな、バカ！
お前、社会人としてどうなの？ なんなのそのしゃべり方？ 具体的に言えよ？
いいよ、別に。話になんないから。私は働きに来てるんだからお前とは話しない。
働きに来てんのに人の悪口いうのか？
お前が仕事をしないからだよ！
仕事しないってなんだよ？ 俺がそこまでお前に迷惑かけたかよ？！
かけられました！ 私は新人だけど、あんたみたいな人に全然助けられた覚えがない！
話にならないからもう結構！！
その暴言の責任はとってもらうからな！
お前とは今後関わるつもりはないよ、バカ！
～④～
騒ぎを聞いた職場の上司は、二人の間に入り、話し合いの場を設けた。
その席で、小野寺さんは「血が昇ってました。すいませんでした。」と謝罪。
佐野君は不満ながらもその場では「今後、改めるべき点は改める。」とし、その場は収まった。
～⑤～
しかしその後、佐野君は、「あの時の小野寺は、謝罪するものの態度ではなかった。」「あんな謝罪では納得できない。」として、小野寺さんを訴えることになる。
慰謝料の請求原因は、大きく分けて２点。
①小野寺は職場の同僚たちに「佐野はキモイ」「佐野はシカトの対象だ」など陰口を言った。
②その陰口を確認しようと、同僚達がいる前で問い詰めたところ、小野寺は「バカ」と２回発言し「おまえは仕事をしない」とも発言した。
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被告のなした発言は、原告の人格を侮辱するもので名誉感情を著しく害する極めて悪質であり到底許すことができないものであると言うほかない。 ～中略～ したがって、原告が、被告の発言により受けた精神的苦痛は甚大であり、過去、現在における精神的苦痛に対する慰謝料は、３０万円とすることが相当である。 ※枠内、原文のまま |
（う～ん……)
（『当人同士にしかわからない、深い事情があるのかもしれない』と思って調べてはみたが……)
（これ、ひょっとして……）
ただの子供のケンカじゃなかろうか？
なんだか、非常にバカバカしい事件を調べているような予感。
しかし、まだわからない。
次回、佐野くんに身分を隠して直撃インタビュー！
知られてないと思って自分の都合のいいように言いたい放題言う人間の痴態をお楽しみに！
（つづく）
特捜班：九坪
