●更新日 04/21●


事件編


主婦のOさんは、Pさんの家が大嫌いになってしまいました。

といっても、Pさんの家の人が嫌いなわけではありません。
気に入らないのは、Pさん一家の飼っている飼い犬の『ラッキー』です。

ラッキーは秋田犬の雑種。

ラッキーは、P家の玄関口に繋がれて飼われています。
そして、繋がれた鎖は玄関からちょうど体分くらい外へ出る程度の長さがあり、ラッキーはよく家の前の道路に出て、通行人を眺めたり、寝そべったりしていたのでした。



ラッキーは、とてもおとなしく、めったに吠えることのない気の優しい犬でしたから、通りかかる小学生などには、よく頭を撫でられており近所のマスコットとしても可愛がられていました。



Oさんはこのラッキーが大嫌いになってしまったのです。


もともと、Oさん“犬嫌い”というわけではありません。
むしろ、犬は大好き。
なにせ、自分も5年前から「メリー」という名前の犬を飼っていて、たいそうかわいがっていたのですから。

メリーは白くて可愛いスピッツ。

では、Oさんがラッキーを嫌いになった原因はなんだったのでしょう?

じつは一ヶ月ほど前、OさんのメリーとPさんのラッキー大喧嘩をしたことがあったのです。

散歩中だったOさんとメリーが、Pさんの家を通りかかったとき、 いつものように家の前にいたラッキーに、メリーが吠えながら飛びかかってしまったのです。



怒ったラッキーは反撃。2匹は取っ組み合いの喧嘩をはじめてしまいました。

喧嘩は体の大きなラッキーが終始優勢。
メリーはラッキーの動ける範囲から追い払われてしまいます。


幸い二匹に怪我はなかったのですが、かわいいメリーをやっつけられてしまったOさんは面白くありません。

(うちのメリーになんてことするのよ。)
(飼い犬は自分の家の敷地内で飼うものでしょう?)
(体1匹分程度とはいえ、道路に出てこれるようにしているなんて……)
(Pさんの家は何をしているのかしら?!)


Oさんは徐々に不満を募らせていきました。

そんなある日。

Oさんは一人でPさんの家の前を通りかかりました。
家の前ではラッキーが餌を食べています。
あたりに人影はなくPさんの家の人も見当たりません。

餌皿に向っているラッキーの姿を見ていたOさんは、以前メリーがやっつけられた時のことを思い出し、だんだんと腹がたってきました。

(一回、ひっぱたいてやろうかしら……)
(うん。)
(メリーの仕返しをしてやろう!)

そう考えて、ラッキーに近づいていきます。

餌皿に向って頭を下げているラッキー。
Oさんは、その頭に平手の一撃を加えようと右腕を振り上げました。



その瞬間。



「がばっ」と顔を上げたラッキーが、吠え立てながらOさんに襲い掛かったのです!

犬を飼っている方ならご存知かもしれませんが、食事中の犬はたいへん神経質になっているのです。
興奮し、襲い掛かったラッキーは、

Oさんの左腕に咬み付きました。


Oさんの悲鳴があがります。騒ぎを聞きつけてPさんの家の人も飛び出してきて、大慌てでラッキーを引きはがします。噛み付かれたOさんの左腕は服が破れ、血が流れ出しました。



Oさん「ラッキー嫌い」「P家嫌い」は、これで決定的なものになりました。

Oさん
「頭をなでようとして近づいたら、いきなり襲い掛かられて咬みつかれた!」
「これは飼い主の過失だ!」

とし、

Pさん一家に治療費・慰謝料として70万円の損害賠償を請求する裁判をおこしたのでした。



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さて、裁判員の皆様。
被告:Pさん一家にどんな判決を言い渡しますか?





実際に言い渡された判決はこちら⇒「判決編」



特捜班:九坪




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