●更新日 03/26●
茨城連続殺傷事件〜犯人の異常性と警察の不備〜
23日、JR常磐線「荒川沖駅」で、別の殺人事件で指名手配されていた金川真大容疑者(24)が8人を次々と殺傷した事件。
その概要を時系列に沿ってまとめてみた。
【序説】 ※金川容疑者の卒業高校教頭のコメントより
高校在学中の金川容疑者は、いたってまじめな生徒だった。
欠席は1回のみ、遅刻も1回のみ。弓道部に在籍。2年の時全国大会にも出場。
しかし、高校3年の時、部活動を引退後、生活態度が一変。
学業への意欲が失われ、大学進学希望を就職希望に変更。しかし、学校が紹介した就職先は不採用。
進路未定のまま卒業した。
卒業後、市内の複数のコンビニアルバイト。しかし、これははじめたり、やめたりのを繰り返し。
だんだんと家にこもりがちになっていく。
見かねた父親が定職に就くよう叱ると、物にあたるなど暴力をふるっていた。
【1月】
この頃の金川容疑者の奇行。2台所有する携帯電話の1台からもう1台へ
「おれがやることがすべてだ」「おれが神だ」などのメールを送る。
中旬、コンビニでのアルバイトで70万円を貯金した金川容疑者は、
「目標の金額がたまった」として、アルバイトを辞める。
その頃、携帯電話のサイトでサバイバルナイフを購入。(刃渡り約20センチ・約3000円)
【2月】
市内のホームセンターで文化包丁を購入。(刃渡り役21センチ・約3000円)
後に「刃物は人を殺すために購入した。」と供述している。
【3月】
15日頃 70万円の貯金から約40万円を引き出し、スーツを購入。
19日 朝、妹を殺害しようと考える。しかし、妹は不在だった。
しかたなく、自転車(マウンテンバイク)で外出。
金川容疑者自身の出身小学校へ向う。
理由:「誰かを殺そうと思ったから。」
小学校に到着したが、その日はちょうど卒業式の日だった。
先生や、保護者が多かったため殺人を断念。
9時20分頃、自宅付近まで戻り、三浦芳一さん(72)宅付近を通りかかる。
そこで、玄関前にいた三浦さんに背後から近寄り、首を刺して殺害。
理由:「たまたま見かけたから。」
マウンテンバイクを路上に捨て、歩いて帰宅。
血痕の付着した服を脱ぎ、購入していたスーツに着替え、秋葉原へ。
この際、携帯電話の1台を自宅に残す。
秋葉原にて散髪。頭を丸刈りにする。
その後は秋葉原のビジネスホテルに宿泊。
理由:「都内でサラリーマン風の格好をすれば、警察でも分かりづらいと思った。」
なお、この日、手元の携帯電話から自宅に残した携帯電話にメールを送信。
内容は「すべては運命。」
一方、警察は残されたマウンテンバイクの防犯登録から、金川容疑者を特定。
20日 金川容疑者、秋葉原のビジネスホテルに宿泊。
同日発売された「剣や忍術で敵キャラクターを倒す」ゲームを購入。
21日 警察は、金川容疑者の自宅を家宅捜索。
血痕が付着した服を発見し、金川容疑者を指名手配。
近隣の住民は不安を募らせる。
学校では下校時に子供らを教師が引率するなど警戒措置がとられる。
22日 金川容疑者、「荒川沖駅」付近から携帯電話で110番。
「早く捕まえてごらん。」と警察を挑発。
警察は170人体制で捜査。
常磐線の20駅、電車内、秋葉原などに警察官を固定配置。
「荒川沖駅」には、土浦署の警備課、地域課、生活安全課の8人を配置。
23日 朝、秋葉原を離れた金川容疑者は、10時頃、JR日暮里駅から常磐線に乗車。
11時頃、「荒川沖駅」にて下車。改札を抜けて駅西口へ向う。
サバイバルナイフと文化包丁を両手に持った金川容疑者は、
駅構内の通路を西口から東口へ駆け抜けつつ、地域課の巡査を含む通行人5人を刺す。
そして、東口に至って更に2人を刺し、最後の1人は刺殺。
この際、金川容疑者は一貫して被害者の「首」を狙っていた。
刺殺された山上高広さん(27)の死因は、首を刺されたことによる失血死。
理由:「誰でもいいから人を殺してみたかった。」「駅で7、8人殺そうと思った。」
その後、跨線橋を渡って駅の西口に戻った金川容疑者は、約300m離れた交番へ向う。
しかし、警官は不在。
金川容疑者はインターホンで「私が犯人です。早く捕まえてください。」と通報。
駆け付けた警官の前で両手の刃物を放り出し、抵抗することなく逮捕された。
理由:「犯行後、怖くなったから」
逮捕時の所持金は約30万円。 |
こうして情報を整理してみると、犯人の異常性がいっそう際立って見えてくる事件である。
「妹を殺そうと思った。」
「小学校で誰かを殺そうと思った。」
「たまたま見かけたから殺した。」
「駅で7、8人殺そうと思った。」
など、供述の内容も常軌を逸しているとしか言いようがない。
「妹を殺そうと……」といった供述から、動機について「家庭環境によるものでは?」との見方もされているが、現時点では犯人の更なる自供を待たねばならない。
金川容疑者宅
近所では同容疑者を知る人はほとんどおらず「家からでない人だった」と評されるのみ。
JR常磐線「荒川沖駅」
事件発生現場
JR側は事件については「報道以上のことはわからない」としている。
一方、この事件を防げなかった警察に対し、
『駅付近を警備した警官に刑事課の者がいなかった。』
『改札を出る金川容疑者を確認できなかった。』
などの批判の声もあがっており、
『警備に当った警察官は私服姿に、警棒、手錠、防刃衣といった装備であり、拳銃も、無線も、警笛すら持っておらず、連携がとれていなかった。』
との問題点が指摘されている。
これについて警察は
「容疑者の確保が第一目的だった。」
「無線機を持っていたりすると犯人に気づかれる恐れがあった。」
「駅での通り魔的な連続殺傷は想定外だった。」
と釈明し、体制に不備がなかったことを強調するが、一部には、
「制服でいれば、犯人を抑えられた。」
「警察官が私服でいても役にたたない。」
「顔写真や名前をもっと早く公開していれば避けられた。」
などの声もある。
通り魔事件が頻発する昨今、異常・凶悪な犯罪に対する警察の体制が問われることになりそうだ。
特捜班
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