●更新日 12/16●


茶髪は悪魔の申し子


茶髪。

それが不良の証だったのは今や昔、現代の日本、若者(特に女性)においては黒髪の方が珍しいというというのが現状だ。しかし、こんな茶髪天国な世の中において、茶髪が悪のシンボル、人非人として扱われる場所がある。

そう、「学校」である。

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今月の頭にも、兵庫県川西市の市立中学で、担任教師らがスプレーを使用して、茶髪の男子生徒を強制的に黒髪にしていたことが発覚し、揉めに揉めた事件があった。

生徒と学校側、どちらの主張が正しいのかは現時点では明らかではない。しかし、それ以前の問題として、そもそも茶髪は校則の対象になるものなのか。この点について、コミュニケーション論を研究する社会学の研究者に電話取材した。

――茶髪を校則で禁じるというのは、当然のことなのでしょうか。
「日本で茶髪の学生が増え始めた時期に遡ってお話しします。当時は、茶髪の禁止が校則に盛り込まれているケースは、まずありませんでした。しかし、実際には厳しく取り締まっていた学校は少なくなかったんですね。どのようにしていたかというと、まさに今回の件と同様です。生徒に注意して拒否すれば、強制的に黒に染める。でも当時は、今ほど人権問題も騒がれていませんでしたから、生徒や保護者が教育委員会へ抗議するに至ることは、現在と比べれば遥かに少なかったでしょう。むしろ、茶髪に否定的な親が今よりずっと多かったですから。」
――そういう状況が、次第に変化してきたということですか。
「はい。まず、若者だけでなく親の世代も含む大人たち、特に女性に茶髪が急激に増加していきました。一方で、茶髪は風紀が乱れるという見解は根強かったのですが、教師の暴力行為がマスコミ等で頻繁に問題にされるような状況も生まれていました。そうなると、学校としては茶髪の禁止を校則に盛り込んで、「校則を守るのは当然だ」というようにしたわけです。ところが、「その校則はおかしい」という反発もあり、そこで今回のような問題が生じやすい状況へと至りました。」
――こういう現象は、日本に特徴的なものなのでしょうか。
「それについては実証的な研究を自分では行っていませんが、かつて国際機関に勤務していた研究者の方と話した時に、こんなことを聞きました。以前、日本の高校生が国連の関係機関に、髪や服装の自由を学校が取り締まるのは人権侵害だから、何とかしてほしいと訴えたそうです。ところが、「そんなことを言っているのは、先進国の恵まれた生活を当然に思っているからでしょう。世界には勉強したくてもできない貧しい人々もたくさんいるのです。そんな些細な問題を考えている暇があるのなら、恵まれた生活に感謝して、しっかり勉強して下さい」と言われてしまったとか。」
――今後、この問題はどのように展開していく可能性がありそうですか。
「私立の学校の中には、何十年前から服装が自由だけれども成績は優秀、というところもあります。逆に、厳格な校則だけれども成績も風紀もひどい学校だって、いくらでもあるでしょう。ですから、必ずしも厳格な校則が万能な解決策とは言えません。一方で、特に男性の教師に対しては、茶髪が歓迎されないという風潮も、依然として根強いというのが実情です。茶髪禁止の校則が揺らぐ可能性があるとすれば、更に世代交代が進んだ後のことになるのではないかと予測します。」

たかが茶髪、されど茶髪。「人を外見で判断してはいけない」は、まだまだ建前のようだ。



高橋



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