●更新日 12/24●

嘘つきには死の花束を 


最近、あまりにも分かりやすい嘘をつかれたので、みなさんにもその手繰り方の見本として公開しておこうと思う。

私の知り合いにKという男がいる。その男が、事業に失敗し、数千万の借金を背負った。常日頃から妬みが強く、何事にも批判的な性格だ。職業柄、その場にいない人間の悪口を言う輩は特に警戒していたが、こいつはその典型のような男だった。
その男が私に泣きついてきた。やはり、事業の失敗を他人事のようにほざいていた。そして、どうかあなたの会社に入れて欲しい、と言ってきた。私は「君のようなタイプはサラリーマンに向いていないと思う」ときっぱり断った。しかし、いや、頑張るからだの、こうしたいだの、執拗にねばるものだから、現場で使わなければ周囲に迷惑がかかることはない、と判断し、庶務的な業務ならと、助けることにした。すると彼は言った。
「生活のために最低○○万円は必要です」・・・水をぶっかけて追い返したかったが、このKと私の部下が友人関係で、その部下に何度も頭を下げられたため「どうせひと悶着あるよ」と諭しながらも、結局、雇うことになった。

私は「今までのキャリアは全部忘れて、一から出直す気持ちで働くことが条件」と念を押したが、やはり、勤めて一週間もしないうちに周囲の部下とソリが合わなくなった。少し前まで社長だった、というプライドが人一倍強かった。仕事上のミスで叱責しても、その時は素直に聞くふりをするが、私がいなくなると忽ち不満をあらわにしていた。私の耳に入ることを知ってか知らずか、とにかくこらえ性の無い男だった。

それから半年、数々の問題を興して、彼は辞めていった。Kの希望(相談員になりたい)を私は最後まで聞き入れなかった。ところが、である。Kは私の元を去った直後、グループ傘下の支社に面接に行き、宣伝担当として雇われた。何とも不可解な行動だ。

そしてすぐに、ある問題が勃発した。私がさも言ったかのような話を捏造し、ふれ回ったのである。しかも、ご丁寧に、「BOSSの部下から聞いたんだけど」と、話の信憑性を高める演出付きだ。おおまかに言うと「重要な本部セクションを支社のZに任せるかも」といった内容だ。ライバルの多いZが大抜擢されれば、組織全体が騒々しくなるのは当然である。私はそれを聞いて非常に驚く。そんなことを考えたこともなければ寝言ですら言ったこともない。

いくつかの支社から「BOSS、この話は本当ですか?」と電話が入る。ここで、「君は誰から聞いたのか?」とは問わない。噂話は数人を経由してから本人に到達する。聞けば《かばう》という現象がおきて、余計に火元があやふやになる。私は「君が聞いた人のことはどうでもいいから、その人に『あ、昨日の話だけどさ、おもしろいね、BOSSには聞けないね。で、誰から耳に入ったの?』と尋ねてみて、それを教えてよ」と網をかけた。つまり、ふたつ先の情報を取る方法だ。(飛び石収集)

Kにとってみれば、おもしろ半分、たわいも無い冗談のつもりだったのかも知れない。本人に直接問いただしても認めないだろう。だが、名前を使われた三人からは猛烈な怒りを買った。組織内での『死』が確実に迫る。