●更新日 7/21● |
結 末
「渡邉さん、実は、私は元々はこの国の人間ではないのです」
人生80年とも言われるが、目の前でこんなセリフを言われる人間は少ないに違いない。私は理由を尋ねた。 「国籍が違う、とは?」 「いえ、私は血は日本、国籍はアメリカだったんです。実は・・・」 ここにすべてを書き記すことはできないが、金融系でそれ相応のことをやっていたようだ。収入が多かったのもそのせいらしい。 「私はあなたの過去、それに今何をしてるかなんて全く興味がない。奥さんが心配しているんだよ。奥さんは下にいる。自分で理由を説明してください。」 「怖いんです。このままでは、妻に何らかの被害があるかもしれない。でも妻に言い出す勇気はなかった。失踪したのはそのせいなんです。。。」 と言って泣き崩れてしまう。 「奥さんを愛しているんですか」 と尋ねると、 「もちろんです。だからこんなに・・・」 「あなたがやっているのは現状からの逃げだ。人には1度や2度の過ちはあるし、現状の問題も必ず解決する方法があるはずだ。自分の口で、奥さんにすべてを説明してください」 私はそう言って、下に待機している部下に西田さんを連れてくるように頼んだ。 今、西田夫妻は、シンガポールで子宝にも恵まれ、幸せに暮らしている。 事件が解決した後の依頼者の笑顔は、私たち探偵にとって、なによりの報酬だ。 |
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