●更新日 05/27●


体験レポ!完全無音空間「無響室」で発狂?


無響室は室内の壁が特殊な材質で作られていて、
室内で発生する音を吸収してしまうことで反響を完全に無くし、
ほとんど100パーセントの無音空間を再現する実験施設だ。
主に大学などの実験機関などに配備されている。

とは、

人間の生活に切っても切り離せないもので、
一見、静かなように感じてもほんのわずかな雑音が常に発生している。

テレビをつけていると安心する、という言がよく聞かれるように、
わずかでも雑音があることに人間は潜在的な慣れがあり、
完全に雑音をシャットアウトしてしまうと、ちょっと異常な精神状態になるという。

そして無響室という聞きなれない施設には、ある伝説があるのだ。

無響室に長時間いると、発狂するという……。






こんにちは。

というわけで、無響室にやってきた。
長時間いると発狂するらしいっす。このルーム。

本当に発狂するか試してみようじゃないの。

まず手始めに一般になじみのない「無響室」の実態をお伝えしたい。

壁面のギザギザした突起のようなものが「特殊な消音素材」だ。

断面。このように1mほど壁から突き出している。

このように部屋の中心に向けて尖らせて配置することで消音効果を上げるという。

床も音の反射を抑えるために鉄格子になっている。

もちろん鉄格子の床の下には壁と同様のトゲトゲがびっしりと。
また、驚いたのはドアだ。

分厚すぎて最初ドアと認識できなかった。

部屋の外壁もこれと同じ厚さで出来ており、外部からの音を完全に遮断するのだという。
予想以上に手が込んでいる。完全な無音がどれほど一般生活からかけ離れた環境であるかを象徴するような設計だ。期待は否が応にも高まる。

撮影に協力していただいた実験施設の担当者は語る。

「確かに無響室に長くいることで不安な気持ちになったり、気分がおかしくなることはあるようです。発狂するかはわかりません。人によっては発狂、とはいかなくても深刻な変化はありえます。しかしこんなことに無響室を使おうとしたのはあんたが初めてですよ」

「長くいると発狂」の「長く」がどれほどの時間なのか想像つかない。
都市伝説的な証言を元にすると、長いもので丸一日、短いものでは30分。
しかし実験施設の都合や安全性の問題から、使用は1時間と限定されてしまった。
さていよいよ無響室に足を踏み入れることになる。時間は1時間しかない。
こう言うのはおかしいかもしれないが、発狂できるよう頑張ってみようと思う。



んでもって、入室。

お。

いきなり異常事態がおきた。
部屋に入った瞬間に心臓の鼓動がめちゃくちゃ激しくなった。
足を踏み入れた瞬間から心臓がざわざわし始め、ドアを閉じた時、動悸の激しさがピークに。
小学生の頃、下校途中に道端に落ちたエロ本を発見した時と同じくらいのドキドキと言えばわかってもらえると思う。

「初めて入る人はそうなることが多いです。じきに収まりますけどね」と担当者。

たしかに数分で心臓の鼓動は収まっていった、よし、検証開始だ。

5分経過。

うん。見事なまでに無音だ。いや、もちろん自分が動くと音が聞こえるが、
微動だにしなければ怖いほどの静寂に包まれている。
服と皮膚がこすれる布ずれの音がびっくりするほど大きく聞こえる。
自分の関節の稼働音が聞こえるかな、と思って試したが、さすがに無理だった。

まだ異常はない。

10分経過。

耳鳴りが凄い。静かな部屋にいると耳の置くがキーンとなるあれだ。
それもちょっと不思議で、3種類の耳鳴りが聞こえる。
1つはキーン。1つはコー。そしてファー。わけわからんこと言ったと思う。正式に謝罪します。

いや、でも面白いなぁ、この部屋。感覚が新鮮だ。
こんな体験は生まれて初めてなもので、恥ずかしい話、かなりテンションが上がる。
自分の主観が入ってしまうと元も子もないので、なるべく冷静にレポートしたいと思う。

まだ異常はない。

15分経過。
あっれ。

時計で正確に時間を測っていたのだが、17分を少し過ぎた時だった。
いっきなり何の前触れもなく心臓がドキリ、とした。かなり強く。すこし痛い。
自分の部屋でエロ本を読んでいたら突然おかんが入ってきたときのドキリ、と言えばわかってもらえると思う。

なんだろう。原因がわからないのがちょっと怖いな。

25分経過。

まぁ、発狂、とか面白い感じの変化はまだ皆無。
ただ自分の状態として認識できることは、ひどくボゥッっとする感覚が現れたということ。
ぼうっと、ではなく、ボゥッと、というか、
テレビゲームをやりすぎた時に陥る熱を持ったやな感じのだるさというのが一番近いか。

30分経過。

あれ?あっれー。なんか変。いや、なんか変だ。
背中がじっとり濡れるほど汗をかいていることに気付いたのだが、よく考えると暑くはないのだ。
おかしいじゃないですか?ねぇ。おかしいじゃないですか。はい。

発狂かどうかは知らないが、明らかに体調に変化が現れ始めたようだ。

40分経過。

おお。おおお!
変。変!凄く面白い。視界が変わり始めた!凄い。凄い。
自分が座っているところから実験用のスピーカーが見えるのだが、

ニノマの視界。

↑このスピーカーが、ごろり、って手前に倒れてくる。
いや、倒れないんですけど、「あ、倒れた」って思ってよく見ると倒れてない。
それが1分おきくらいに繰り返される。すげー。あとね、

左の視界。

赤で囲ったあたり、視界が切れるか切れないかって部分を影が横切る。何度も。
でも部屋の中に動くものはない。影が横切るはずがない。

なんだろう。気のせいか?いや、その程度のあいまいな感覚なんだが、自分には実感がある。
無響室に対する過度の期待が見せる錯覚? だとしたらインチキ催眠術に「かかってるかかってる」って喜んでる人となんら変わらない。いや、でもねぇ、変なんですよ。面白いんです。





そして、1時間が経った……。

動悸、倦怠感、発汗、感覚の乱れ(←これって風邪の諸症状じゃ?)が現れ、さらに20分。
人生初の1時間完全無音を体験し、

本当に発狂できたのか?


悪りっす。健在っす。

いやー、申し訳ない。発狂できなかったですわ。頑張ったんですけどね、発狂。
でも自分が過度の期待を抱いていて、いい方向に解釈していた分を差し引いても、
絶対なんらかの人体への影響はあったように思いますわ。しかし発狂はしなかった。残念。

でもね、

撮影を終えてから写真を見ていたんです。

結局体に異常ないし拍子抜けだなぁ、とか思いながら。

そしたら1枚の写真に目が留まったんですよ。

額にかいた汗をとった写真なんですが、

なんか黒目の位置へんじゃね?

あれ?

でも今こうして記事を書いているわけで、普段と変わらない日常を送ってる、

つもり、

なんですがね。あれ?

発狂して、ませんよね? 俺。



ニノマ



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