●更新日 06/14●

負傷の顛末 フランクフルトにて


あの忌まわしい事件から24時間経過し、タイピング出来るまでに怪我が回復したので、私ことサイバー☆ひろし、自分視点で顛末を書きます。山木視点はコチラ



夜中に山木編集長、ライターの梅宮貴子と宿の前の屋台で食事をしていると、

ガチャッ!

という音。
顔を上げると、ウエーブの掛かった肩まで髪のある男が走り去って行く。
手にはおれのデジタル1眼レフカメラ。

カメラを捕られた!!

白のTシャツとデニムに包まれたスタイルのいい身体。背景には薄明かりに浮かぶ石の建物。

絵になるなあ。

と思ったが、次の瞬間、犯人に向かって走り出した。
「追いつくのは無理だろう」と走り始めたが10m程の距離を置き離されることも無い。

「おい!」

「泥棒!泥棒!」


と叫ぶと男がカメラを捨てた。
追うのをやめようかと思ったが、

ヤツを取り押さえよう。

とスピードを上げた。
差が縮まる。

イケる!

と思った次の瞬間、両足に力が入らなくなり頭から倒れた。
イヤな衝撃。
顔からボタボタと血が落ち、道路が赤く染まる。

深追いしなければよかった・・・

後悔の念が過ぎる。
片言の日本語で話しかけてくる男に、

「ティシュ!ティシュ!」

と叫ぶ。血を止めなければ。
タオルが渡されたので、顔を抑える。
梅宮の顔が見える。
隣にある自分のカメラを指差し、

「首からかけて」

と頼む。再度の盗難が怖い。
手にしている彼女のカメラを見つけ、

「写真撮って」

「離れたところからも撮って」


と指示。これで彼女も遠慮することなく写真を撮れるだろう。
梅宮カメラのフラッシュが焚かれる。
山木がやってくる。

「仰向けにならなければダメだ」

と言いながらおれの身体を反転する。

「傷の状態がわからないので見て下さい」

と山木に訊くと、顔からタオルを取り、

「額から血が出てます。酷いです」

「鼻じゃないんですか?」

「額です」

「格闘技で言うとどの程度の傷の深さですか?」

「酷いほうです」


いくつもの人の顔がのぞき込んでいるのがぼんやりと見える。

「おうっ。おうっ」

とため息のような自分の声が聞こえる。

「眠ったらダメ。話しかけて」

片言男の声。
山木、片言男、知らない日本人女性が話しかけてくる。
小さい声で返す。
寒い。身体が震える。
おれの手を握ってくれている山木の手に安心感を覚える。




救急車遅いな。


何度もそう思う。



サイバー☆ひろし写真


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